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FMV10周年を記念して
日経BP誌に掲載された記事をご紹介します。
Special Report 富士通 FMVの未来

これからのPCにとって大切なのは、「これができる」ではなく、お客様に感動を提供することです。
FMVが誕生して10年。以来、日本を代表するコンシューマー向けPCとして、ソフトウェア・周辺機器の進化やインターネットの普及など、激しい環境の変化の中で進化を続けてきた。そして、この秋登場した最新のデスクトップ・モデルは、高画質の薄型テレビと高性能HDD/DVDレコーダー、オーディオの機能を備え、AV機器の領域を完全に取り込もうとしているかに見える。果たして、FMVは何をめざし、これからどう変わっていこうとしているのか。FMVデスクトップ機の事業を率いる齋藤邦彰パーソナルシステム事業部長に話を伺った。
(聞き手 : 日経クリック編集長  渡辺和博)

テレビ、HDD/DVDレコーダーとしても十分なFMV

− 今回登場したデスクトップ機を見てまず思ったのは、「これはもうテレビじゃないか」ということです。特に22型のワイド液晶ディスプレイを搭載したTシリーズなどは、完全に高画質のワイド液晶テレビです。
齋藤 お客様のニーズに応えていくうちに、気がついたらPCはテレビとしても十分使えるようになっていた。FMVのデスクトップ機は全機種がテレビチューナーを搭載していますし、テレビとして使っていただくなら、画質・音質とも家電メーカーに負けないものをと考え、最先端の技術を注ぎ込みました。



Hシリーズは本体も外見だけでなく、機能的にも完全に高性能HDD/DVDレコーダーです。
富士通株式会社 パーソナルビジネス本部 モバイルPC事業部長 五十嵐 一浩 氏
富士通株式会社 パーソナルビジネス本部
パーソナルシステム事業部長

齋藤 邦彰 氏
齋藤 こちらはむしろPCが先行していた機能で、これにAV家電が追いついてきたということです。もちろん映像を編集する場合の操作性・多機能性は、PCの方が優れていますし、今のFMVはテレビとHDD/DVDレコーダーとPCを一体化することで、コスト的にも優れた製品になっていると思います。

− 「見る」「録る」「残す」の三機能を高いレベルで実現しているわけですね。ただ、PCでいつも気になるのは、あれもこれもできるがゆえの、操作の難しさです。
齋藤 今のFMVはテレビを見たり、録画したり、録画した番組を見たりといった操作はもちろん、録り貯めた映像・画像・音楽を検索して見る・聴くといった操作までも、AV家電のようにリモコンでできるようになっています。しかも、PCを立ち上げずに、テレビだけすぐつけられるインスタントテレビ機能なども搭載していますから、ストレスは全く感じることなく映像・画像・音楽を楽しむことができます。

AVとの共存からホームネットワークのPCが見えてくる

デスクパワーシリーズ
FMV-DESKPOWER Hシリーズ
− ここまでAVの領域に踏み込んでくると、AV機器との競合ということになってくると思うんですが、そのあたりはどう考えていらっしゃいますか?
齋藤 対立ではなく共存だと思っています。今はもうPCもテレビもオーディオも一家に一台という時代ではありませんから、お客様の生活スタイルや好みに合わせてFMVとAV家電を自由に組み合わせて使っていただければいい。

− その共存の中でFMVはこれからどう進化していくんでしょうか?
齋藤 ふたつの方向性があると思います。ひとつは自己完結型で、1台でなんでもできてしまう高性能・多機能を追求していく方向性。もうひとつはネットワーク型といいますか、色々なPC、AV機器、そしていずれはさまざまな家電ともつながっていくという方向性です。

− これからホームネットワークが普及していけば、PCがその中心的な役割を果たすことになるでしょう。
齋藤 何が中心でもいいと思うんです。こちらだけが「つなぐ」努力をしていてもつながらないわけで、最近やっとAV家電がIPを喋るようになってきて、いよいよホームネットワークが具体化できるようになった。そこでお互いの強みを活かして補完しながら色々な製品を提供し、そこからお客様がニーズに合わせて選んで、最適のネットワークを構築していただければよい。

− PCの強みといえばやはりプロセッシング機能ということになりますか?
齋藤 取り込んだ映像・画像・音楽を編集して、色々な楽しみ方をする場合などには、PCの多機能性・操作性が生きてくるでしょう。それからPCの魅力は変化への対応力ですね。これから次世代DVDなど新しいメディアが出てきますし、魅力的なアプリケーションも次々出てきます。ソフトをアップデートできる、新しいメディアの方式に対応できるという融通性はやはりPCならではの強みだと思います。さらに、企業内LANの技術と経験をいかして、AV機器や携帯電話などの情報端末、家電製品まで色々な機器をつなぎ、情報を記録し、コントロールしていくという、ホームネットワークのハブとしての役割も重要になっていくでしょう。FMVとしてはこうしたPCの強みを最大限にいかしていきたいと考えています。

ホームネットワークのハブから
お客様本位の「エージェント」へ

− これだけPCが進化し、ホームネットワークも本格化していくとなると、大切になってくるのは、「お客様はそこから何を得られるのか」だと思います。これまで様々な「三種の神器」が家庭にもたらしてきたような、圧倒的な満足感・幸福感を、PCは提供できるでしょうか?
齋藤 PCの知性・情報力・制御能力をもっと積極的にいかしていくと、次に見えてくるのは、ただお客様に使っていただくのではなく、PCの方からお客様に色々な提案・助言をしていくエージェント機能だと思います。
たとえばHDDが400GB、600GBと大容量化してくると、お客様が何を録画するか考えるのではなく、とりあえず全部録画しておいて、お客様があとから選ぶ。それもPC側がお客様の好みを学習して、お客様が見たいと思う番組を提示していくといったこともできますね。それはもう近未来というより、すぐにも実現できる機能です。これをさらに発展させていけば、ホームネットワークにつながっている様々な情報機器・AV機器・家電を使ったエージェント機能も可能でしょう。ただし、便利というのはおせっかいと紙一重ですから、あくまでそれぞれのお客様が何を楽しい・便利・心地よいと感じるかに合わせていけるようなシステムでなければならないと思います。

− これから少子化・高齢化が進んでいく中で、人生を楽しみたいという欲求・ニーズは、若者だけでなく幅広い世代でさらに高まっていくでしょう。これをサポートしていくのがメーカーとしての役割だと思いますが。
齋藤 そのためには単に「今度のFMVはこれができる、あれができる」では足りない。FMVを通じてお客様が想像もしていなかったような楽しさ・感動を提供していきたいですね。
本企画記事は「日経クリック」11月8日発売号、P84〜85からの抜粋です。
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