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FMV10周年を記念して
日経BP誌に掲載された記事をご紹介します。
Special Report 富士通 FMVの未来
モバイルだからといって、やりたいことをあきらめないのがFMVのモバイルなんです。
FMV-BIBLO NX90J/T
FMV-BIBLO NX90J/T
今年はFMVが登場してちょうど10周年。Windowsやインターネットの普及など、激しい環境の変化の中で、FMVは常にコンシューマー向けPCの代表として、時代と共に進化を続けてきた。特に最新のノートPCでは、軽量かつ多機能なモバイルPCから高画質のワイド液晶テレビとして使える大画面ノートまで、さまざまなタイプがそろっている。はたして“FMV-BIBLO”は今、何をねらい、これから何をめざしていこうとしているのか。モバイル事業を率いる五十嵐一浩モバイルPC事業部長に、FMVのノート/モバイルPC戦略を伺った。
  (聞き手:日経ベストPC+デジタル編集長 根本勝)
「AVノート」か「実用モバイル」かではなく
やりたいことはすべて詰め込んでいく

− この秋冬モデルのノートで一番注目しているのは、17型のワイド液晶ディスプレイを搭載したNXです。テレビやHDD/DVDレコーダー&プレーヤーとして十分な機能・性能を持ち、しかもテンキー付きのキーボードなど、実用PCとしての機能もしっかりしている。それだけに、どういったユーザーをターゲットにしているのか気になるのですが。
五十嵐 ひとつの大きなテーマはご指摘の通り“AV for Mobile”、つまりモバイルでいかにAVを楽しんでもらうかです。ワイド画面で録画もできるNXなどは、それなりの大きさ・重さがありますから、基本は据え置きで、ときどきモバイルというタイプ。ほかにテレビ機能付きでもっとモバイルのしやすさを重視したタイプやテレビ機能のないタイプなど、計5シリーズで幅広いユーザーのニーズに対応しています。
富士通株式会社 パーソナルビジネス本部 モバイルPC事業部長 五十嵐 一浩 氏
富士通株式会社 パーソナルビジネス本部
モバイルPC事業部長
五十嵐 一浩 氏

− 一番小型で軽量のLOOXシリーズはNXの対極にある製品として面白いですね。リアルモバイルでありながら、その制約の中でCD/DVDの再生・書き込みなど最大限のAV機能を持っている。
五十嵐 やりたいことはどの機種も同じなんですよ。お客様のモバイル用途に合わせたサイズに、AV機能やビジネス用途にも耐えるPCの機能をできるかぎり詰め込んでいくのが富士通のポリシーです。機能を削ってまで薄くするのではなく、お客様がやりたいことは全部できるモバイルをめざしたいわけです。とかくターゲットを限定して、何が「売り」なのかを明確にしようとする傾向がありますが、モバイルの基本は「いつでも・どこでも・なんでも」できることだと思います。家にいるのと同じことが外でもできるところに価値がある。

モバイルだからこそ大切なセキュリティ
先端技術から新たな可能性が生まれる

− モバイルPCを手軽に持ち運べば、それだけ盗難・紛失や、他人による不正使用の危険性が増大します。そこで大切になってくるのがセキュリティです。モバイル重視の小型・軽量PCでは指紋認証機能を導入するなど、セキュリティに先端技術を導入していますね。
五十嵐 FMVではセキュリティを大げさに考えるのではなく、ごく日常的なこととして使い勝手をよくするためにこうした技術を導入しています。指紋認証機能のおかげで面倒なIDやパスワードを入力しなくても指をセンサーに触れるだけでPCが使え、Webサイトに入ることができる。先端技術うんぬんよりも、お客様にとってのこの手軽さ・快適さが大切だと思います。

− 企業向けFMVの最新モデルでは、非接触ICカード「フェリカ」をかざして起動させる技術も導入されました。色々な認証技術を追求していく狙いはどこにあるのでしょうか?
五十嵐 「フェリカ」の用途はセキュリティだけではありません。社員証で社員食堂などの支払いをするように、たとえば出張旅費の精算などPCを通じて社内の電子決済をするシステムにも使える。こうした先端技術を積極的に導入していくところから、ユビキタス社会に求められるモバイルPCへと、FMVが進化していく可能性が見えてくると思います。

モバイルPCがユーザーのパートナーになる日

− 10月にWPC EXPOのパネルセッションで五十嵐さんは、「これからのモバイルPCは、エージェント機能を発達させていくことになる」とおっしゃっていました。この機能はどんなかたちで実現されていくのでしょうか?
五十嵐 まず一番実現に近いのはAVのエージェント機能です。これからHDDがどんどん大容量化されてくると、お客様が見たい番組を選んで録画する必要はありませんから、PCがとりあえず勝手に全部録画しておいてくれる。あるいはPCがお客様の視聴履歴から好みを判断して、お客様が興味を持ちそうな番組を録画して提示してくれる。さらに、たとえば録画した番組の出演者情報や、応援しているサッカーチームが何時何分にゴールしたかといった情報から、お客様の見たいシーンだけを抽出して見せてくれたりする。

− さらにその先は、PCの中だけでなく、ホームネットワークにつながっている色々なAV機器・家電製品と連携して、料理のレシピを教えてくれるとか、生活全般のアドバイス、サポートをしてくれるようになる?
五十嵐 たとえばホームネットワークがあたりまえになって、各部屋にサーバーやディスプレイ、センサーが設置され、ワイヤレスでつながっていれば、モバイルPCは今の携帯電話の感覚で常に持ち歩けるようになるでしょう。そうなればホームネットワークにつながっている機器全体が、トータルシステムとしてお客様に色々なことをしてくれるわけで、モバイルPCはお客様個人の好みや気持ちを受け取り、必要なことをアドバイスしたり、ネットワークを通じて色々な機器を動かしたりといった役割を果たす、お客様密着型のパートナーになっていくでしょう。もちろんホームネットワーク環境がもっと整うことが必要ですが、今からビジョンを出し合い、実現に必要な技術を準備していくことが大切だと考えています。

− 富士通一社でどうするということではなく、色々な企業とお客様の声を聴きながら進めていくことなのでしょうね。
五十嵐 モバイルPCを進化させていくためには、もっとモバイルPCを使っていただく必要があります。どんどん新しい使い方を試して頂き、お客様のさまざまなご意見・ご要望を聴きながら、次なるFMVのかたちを考えていきたいと思います。
本企画記事は「日経ベストPC+デジタル」11月13日発売号、P120〜121からの抜粋です。
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