このページの本文へ移動

FMV LIFEBOOK 14.1型大画面モバイル・ノート「MGH series」こだわり開発物語


「MGH series」開発スタッフの面々



高い処理能力はもちろん、使いやすさや高度な信頼性も求められる企業向けノートブック・パソコンの市場で「3年連続出荷台数No.1(2001~2003年)」(IDC Japan調べ)の実績を持つ富士通。その同社が世界規模で展開する戦略商品として新たに投入したのが新世代スリム・モバイルノート、「MGH series」だ。14.1型の大画面を採用しながら、モバイル利用に適した1.75kg/25.4mmという軽量・薄型ボディを実現した革新的モバイルノートは、いかにして生み出されていったのだろうか。



第1回 やっぱり薄型大画面−商品コンセプト編 第2回 “こだわり”を形にする−設計編 第3回 “使いやすさ”を形にする−デザイン編 第4回 こだわり続けるMade in Japan−製造編

第3回 “使いやすさ”を形にする−デザイン編

仕事でパソコンを利用する40~60歳を対象に調査

薄型・軽量ボディの中に「オフィス内で使えるファーストマシン」に求められる多彩な機能を凝縮している「MGH series」だが、開発陣は、単に機能を詰め込むだけでなく、“使いやすさ”にも心血を注いだ。

特にキーボード。パソコンに各種データを入力する際に、使用者が直接接するのがキーボード。そのキーボードの使い勝手は、作業の能率を大きく左右する。キーボードの“使いやすさ”は、特にビジネスユースを想定したパソコンでは生命線とも言える。それだけに富士通は、これまでもキーボードの“使いやすさ”にはことさら意識してきた。

それを裏付けるのが、富士通が2003年12月に実施した、仕事でパソコンを利用する45~60歳を対象にした調査だ。キーボードの操作性の主要評価ポイントは、「文字の見やすさ」、「使用頻度を想定したキーレイアウト(大きさ、位置)」、「打鍵感(キーの重さ等のフィーリングやキーピッチ、ストローク)」、「タイピング操作のしやすさ(キーボード角度、パームレスト形状)」の4点だが「競合する6社のノートパソコンの中で、富士通のFMV-LIFEBOOKは、これら4項目のすべてについて最高の評価を獲得しました」とパーソナルビジネス本部パーソナルマーケティング統括部クライアントPC推進部の茅原正清と胸を張る。

この調査で興味深いのは、調査対象の年齢層。はっきり言って若い人ではない。こうしたサンプルを選んだのは、富士通のパソコン設計思想を貫いているのが、ユニバーサルデザイン(UD)だからだ。ユニバーサルデザインの基本的な考え方は、障害者や高齢者なども含めて誰もが“使いやすい”。90年代前半に、工業デザイナーで当時米ノースカロライナ大学教授教授だったロン・メイスが中心になって提唱した。そのユニバーサルデザインこそ、富士通のパソコンのDNAの一つとも言える。

“使いやすさ”を形にする、それも、誰にとっても“使いやすい”形にする。FMV-LIFEBOOKのそのDNAは「MGH series」にも脈々と受け継がれている。


文字、レイアウトなどにこだわったキーボードデザイン


総合デザインセンター プロダクトデザイン部 チーフデザイナー 川見 充彦


パーソナルビジネス本部 モバイルPC事業部 第三技術部 大西 益生

では、キーボードの操作性の4つの評価ポイントは、「MGH series」ではどのように具体化されたのか。

まず、「文字の見やすさ」。キーボードの色も文字が見やすい白にし、キートップの文字の形も大きく見やすい「ユニバーサルフォント」を採用した(PHOTO 1参照)。

さらに、デザインを担当した総合デザインセンタープロダクトデザイン部チーフデザイナーの川見充彦によれば、「実は、MGH seriesと同じ筐体を利用してパーソナルユーザー向け製品も販売されており、その製品では若者を意識してキーボードの色に黒を採用しています。ビジネスユーザー向けのMGH seriesで、敢えてキーボードの色を白にしたのは、より幅広い年齢層の方々が長時間業務で利用することを配慮してのことです」ということだった。

次に「キーレイアウト」。“Enterキー”は拡大、使用頻度の高い“Ctrlキー”、“Deleteキー”、“Escキー”は、利用しやすいようにキーボードの四隅に配置。特に“Ctrlキー”については、「OSの進化などにより使用頻度が減ってきた“Fnキー”と入れ替え、デスクトップ用キーボードと同じ左下角に配置するよう改めました」と、モバイルPC事業部第三技術部の大西益生は説明する。

また、カーソルの移動などに使う“矢印キー”についても、他のキーより一段下げ、逆Tの字の形で右下に独立させ、手探りで位置が分かる工夫を加えている(PHOTO2参照)。日本語入力時に頻繁に使用する“スペースキー”、“変換キー”、“無変換キー”は、他より大きめにするとともに、他のキーに比して僅かに凸型に高くすることで操作性を改善した。

「打鍵感」はどうか。キー内部のゴム・パンタグラフを改善し、ぐらつきのない安定感を実現した。さらに、デスクトップ用キーボードに近い操作性を実現するために、制約の多い薄型・軽量ボディの中で、19mmのキーピッチと3mmのキーストロークを確保している。

そして「タイピング操作のしやすさ」。デザイン担当の川見は「キー入力時に手のひらをのせるパームレスト部分をラウンド形状にすることにより(PHOTO 3参照)、手のあたりをやわらかくしています。トラックパッド下に設けられた“スクロールボタン”(PHOTO4参照)には、触ってすぐに何か分かるよう立体感をもたせました。シリンダー形状の採用により、小さな力で確実に押すことができます」と語る。



PHOTO 1 大きく見やすいキートップの文字



PHOTO 2 カーソルキー



PHOTO 3 疲労を軽減するスラントパームレスト



PHOTO 4 スクロールボタン


USBポートの位置や開閉ボタンまで“使いやすさ”を意識


パーソナルビジネス本部 モバイルPC事業部 第二技術部 課長 三浦 隆文


パーソナルビジネス本部 モバイルPC事業部 第二技術部 山田 徹

“使いやすさ”を徹底追究したのは、キーボードだけでない。本体に搭載した3ポートのUSB2.0のうち、1ポートだけアクセスしやすい右側面に配置している(PHOTO5参照)。「同じ機能は1箇所にまとめた方が軽量化/薄型化には有利なのですが、敢えて1ポートを離れた位置に設置しました。これにより部品点数は増え、配線の取り回しも複雑になってしまいますが、利用者の使いやすさを考えれば、当然の結論でした」と語るのはモバイルPC事業部第二技術部課長の三浦隆文だ。

ディスプレイ開閉ボタンについても、多くのモバイルノートが採用しているスライド型でなく、片手でワンタッチ操作がしやすいプッシュ型を採用した(PHOTO 6参照)。モバイルPC事業部第二技術部の山田徹は語る。「スライド型のほうが、比較的スペースにゆとりのある液晶側に、スライドするフック等の部品を収められ、設計上も楽なのですが、MGH seriesでは、操作性を優先してパーツがぎっしり詰まったキーボード側に開閉機能を収めました」。

また、快適なモバイルワークの鍵を握るバッテリに関しても、標準で約5.3時間、増設バッテリ追加時には約9.2時間というロングライフ(Pentium-Mモデル)を実現している。しかも、増設バッテリはモバイル・マルチベイに格納されるため、バッテリ増設時にも筐体サイズは変わらない。さらにステータスLCDの採用により、5段階表示によるバッテリ残量および充電進行状況の把握も可能だ。

このほか、CD等の出し入れのしやすさを考慮して、光ドライブを格納するモバイル・マルチベイは右側面に配置。オーディオ端子は、使用者の首の後ろにケーブルをまわして装着するタイプ(ケーブルの左右の長さが異なる)のヘッドフォンの利用も考慮して、左側面に配置した。


PHOTO 5 USBポート


PHOTO 6 ワンタッチ操作のディスプレイ開閉ボタン


膝に載せても熱くなりすぎず、そしてギラギラ感のない塗装

「MGH series」には、長年にわたるモバイルノート開発の経験を生かし、通常はなかなか目の届きにくい所にも“使いやすさ”への配慮が数多く施されている。

ユニークな工夫の一つとしては、筐体の裏側に貼り付けられた「低温やけど対策の起毛材」がある(PHOTO 7参照)。モバイルノートの場合、机上だけでなく、膝の上に載せて操作することもある。ところが、パソコンには稼働中に高い熱を発する部品もあるため、筐体の一部が40~50度の高温になる場合もあり、長時間利用していると、低温やけどを負ってしまう危険性もある。そこで、設計担当の三浦らは、「ヒートスポット(負荷の高いある部分が局部的に温度上昇する現象)を考慮した設計と試験を行って、ユーザーに不快感を感じさせないよう、起毛材を貼り付けるなどの対策を施しました」。モバイルノート利用状況を熟知している設計陣だからこそ、思いついたアイデアと言えよう。

周辺装置の脱着を容易にするポートリプリケーター(PHOTO 8参照)との接続部に、自動的に開閉するフラップ構造を採用したのも、ユーザーの視点を重視しているからこそ。これによりいちいち本体を裏返して手で蓋を開ける必要がなくなり、ワンタッチ接続が可能になった。

持ち歩くことが多いモバイルノートの場合、机上に置く際などに予想外の衝撃を与えてしまうことがある。そこで「MGH series」には、机上に置く時最初にぶつかる角に、本体を保護する衝撃吸収パッド(エラストマー)を装着してある(PHOTO 9参照)。

また、日本だけではなく世界中で販売される「MGH series」は、ドイツの機器安全法に基づいて検査され、安全性が認証された製品につけられる「GSマーク」を取得している。ヨーロッパの消費者が製品購入時の目安のひとつとする「GSマーク」の取得には、目への刺激を低減することが求められており、「MGH series」では、筐体、LCD枠等の作業にかかわる部分のギラギラ感を無くすために「低反射塗装処理」を施してある。

設計人の“こだわり”と“使いやすさ”を形にした「MGH series」。しかし、それが商品として量産されてユーザーの元に届いてこそ、この開発物語も完結する。次回の最終回は、実際に製造している島根富士通からのレポートだ。


PHOTO 7 低温やけど対策起毛材



PHOTO 8 ポートリプリケータ



PHOTO 9 衝撃吸収パッド(エラストマー)