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FMV LIFEBOOK 14.1型大画面モバイル・ノート「MGH series」こだわり開発物語

高い処理能力はもちろん、使いやすさや高度な信頼性も求められる企業向けノートブック・パソコンの市場で「3年連続出荷台数No.1(2001~2003年)」(IDC Japan調べ)の実績を持つ富士通。その同社が世界規模で展開する戦略商品として新たに投入したのが新世代スリム・モバイルノート、「MGH series」だ。14.1型の大画面を採用しながら、モバイル利用に適した1.75kg/25.4mmという軽量・薄型ボディを実現した革新的モバイルノートは、いかにして生み出されていったのだろうか。


写真:ノートPCを一貫生産する島根富士通の面々。後のモニュメントには「製造不良“ゼロ”への挑戦の文字。



第1回 やっぱり薄型大画面―商品コンセプト編 第2回 “こだわり”を形にする―設計編 第3回 “使いやすさ”を形にする―デザイン編 第4回 こだわり続けるMade in Japan―製造編

第4回 こだわり続けるMade in Japan―製造編

プリント版から完成品組み立てまで


株式会社島根富士通 代表取締役社長 山森 章朗

我が国のパソコンメーカーの多くが、製造拠点を人件費の安い中国・台湾などへの移管する中で、富士通は現在も日本国内での製造を堅持している。14.1型大画面モバイル・ノート「MGH Series」を含むノートパソコンは島根県の島根富士通で、デスクトップパソコンは福島県の富士通アイソテックで生産している。

その理由を、島根富士通の代表取締役社長、山森章朗は、こう語る。「我々の使命は、世界トップ品質の製品をタイムリーにお客様に供給することです。その責任を全うするには、開発拠点を国内におく富士通は、やはり国内で生産した方がいい」。

2003年度におけるノートパソコンの国内生産量は約383万台。そのうちの半数を超える200万台強を島根富士通が生産している。国内生産といっても、同社は、プリント板(マザーボード)から製品の完成まで、一貫生産を行っていることが他社との大きな違いだ。島根富士通は、国内におけるノートパソコン生産の最後の砦といっていい。富士通は、なぜそれほどまでにMade in Japanにこだわるのか。


開発拠点とは意外に“目と鼻の先”


取締役製造部長 山田 壽男

富士通がノートパソコンの開発拠点を置いているのは、東京郊外にある南多摩工場。島根県にある島根富士通との行き来は、かなり不便そうに感じる。しかし、実際には、東京の羽田空港から1時間15分で行ける出雲空港から、同社まではタクシーでわずか10分の距離に過ぎず、日帰りも容易。いわば意外に“目と鼻の先”なのだ。

驚くべき勢いで技術革新が進むため、世代交代が早く“生もの”以上に鮮度が落ちやすいと言われるパソコン。それだけに、新製品を開発する際には、「一番旬なキーコンポーネントを、いかに早く取り入れ、お客様の元へ届けるかが大きなポイントになります」と語る山森。その点、同社は、必要な時に、いつでも開発部隊とフェイス・トゥ・フェイスで意思の疎通を図れるので、開発期間を限界まで短縮することができる。最新のキーコンポーネントの登場をぎりぎりまで待つことも可能だ。最先端の機能を満載しているMGH Seriesにも、その優位性は遺憾なく発揮されている。

国内に開発拠点を持つメーカーが、中国など海外の工場でパソコンを製造している場合には、こうはいかない。製造現場と討議すべき課題が見つかったからといって、ちょっと行ってくるというわけにもいかず、どうしても様々な場面でタイムロスが生じてしまう。言葉の違いにより円滑なコミュニケーションをとることも難しいだろう。



工程内不良率の目標値は1.7%

しかし、いくら地理的優位性があるからといって、人件費が日本の1/10から1/20という中国・台湾の製造工場と、コスト面で競争するのは容易なことではない。島根富士通では、このコスト面のハンディを打ち破る切り札として、「品質と効率を徹底的に追求した製造プロセスの確立に力を注いでいます」と、製造現場を一手に仕切る取締役製造部長の山田壽男は語る。

同社の工程内における不良率の目標値は1.7%。「MGH Seriesの場合、最新の機能を薄型軽量ボディに満載した、まったくの新設計のため、1.7%の目標値を達成するのは大変でした」と苦労を語るのは品質保証部の松元省吾。中国や台湾の工場における不良率は、同社の約3倍にあたる5%程度といわれる。

製造現場における高い品質を支えているのがSQCS(島根富士通クオリティ・コントロール・システム)だ。同システムでは、生産管理、進度管理、機暦管理、受入検査、装置リペア管理、プリント板リペア管理を連携させることにより、設計品質、装置品質、プリント板品質、フィールド品質に常時目を配り、重要な同一障害が多発すると、Webの仕組みを使って関係部門にアラームを同時配信する仕組みを採用している。

島根富士通では製造の効率化にも徹底してこだわっている。1995年には2500台だった1日あたりの製造能力を、現在では1万3000台(ピーク時:1万5000台)まで引き上げることに成功。このような優れた品質と高い効率性を実現するために、同社では、「できるだけマシンを止めず、部品を交換する準備を最短にするため、プリント板と装置(パソコン本体)はすべて、二次元バーコードによる一元管理を行っています」(山田)という。

プリント板の製造工程を簡単に紹介すると、まず、プリント板にバーコードを印字した後に、自動実装機による電子部品の装着が行われ、外観検査により半田付けの良否を自動判定。次にリチウム電池やカードホルダーをプリント板に取り付け、Semi Automatic Testerによって全数の電気試験を実施、移動式作業台車を使用して金具等の取り付け(Sub組立)を行ってから装置の工程へと引き継がれる。

これらの作業の指示は、すべてバーコードを利用したプル方式で行われる。どのラインのどのマシンで、どのぐらい部品が消費されているかがバーコードで管理されているため、消費状況に応じて事前に部品を準備することができるのだ。


品質保証部(品質管理担当) 松元 省吾


人為的うっかりミスを徹底排除


生産部 佐藤 滋



PHOTO 1 自動外観検査装置



PHOTO 2 サブ組み立てに使用している屋台台車



PHOTO 3 曜日ごとに色分けされた部材の目印のために使用するメガホン入れ。月曜は青、火曜は黄、水・土曜は緑、木曜は白、金曜は茶。赤は「保留/遅延」。


島根富士通を語るとき、人為的なミス、いわゆるうっかりミスを徹底排除する独自の仕組みを編み出し、工程の随所に活用していることも忘れることはできない。

例えば、半田付けの良否の判定作業では、1500点ほど部品が装着されたプリント板を、まず、自動外観検査装置(レーザーを上部から照射して検査)を使って検査し(PHOTO 1)、良品か不良かの判定が難しいものは、目視検査支援装置を使って人の目で検査を行う。自動外観検査装置の検査結果はバーコード管理されているため、目視検査支援装置では検査すべき場所を自動的に拡大して表示することができ、検査漏れを防いでいる。

サブ組み立てで使用される屋台台車(自動搬送車:PHOTO 2)にも、ミスを排除するアイデアが満載だ。台車には、部材全数と工具、治具が搭載されて作業者の所に供給され、すべての部材が無くなった時に作業が完了する仕組みを採用している。この自動搬送する屋台台車を使用した部材供給の自動化により、供給ミスを撲滅。毎日供給される部材は、曜日毎に決めた色により管理して間違いを防いでいる。具体的には、部材一式の上にその曜日の色の“メガホン”を目印として乗せている。いわゆる「見える化」だ。(PHOTO3)。

「製造の現場では、ネジ1本なくてもラインが止まってしまうので、部品が不足することは絶対にあってはなりません」と生産部の佐藤滋は部品供給の重要さを強調する。段取作業と組み立て作業を選任化、品質、効率の向上に大きく寄与している。

また、ネジの締め忘れ、締め付け不足を防ぐために、指定のトルクで決まった本数を締めないと次の工程へ進めないよう、ブザーが鳴って警告する仕組みも導入している。さらにネジ種類を間違えることがないよう、ネジは指定された電動ドライバーでないと取れないよう工夫されている(PHOTO 4)。

様々な機種が同時に流れてくる装置検査でも、機種毎に違う検査プログラムを間違えることがないよう、バーコードを読んで、その機種用のプログラムを自動的にインストールする仕組みを導入。ノートパソコン本体裏面に各種シールを貼る工程にも同様の仕組みを導入している(PHOTO 5)。さらに梱包時にも、従来は機種毎に専用の化粧箱を用意していたが、現在は、全機種で同じ箱を使い、バーコードを読むことで自動的に機種名を箱に印刷する仕組みを採用している。その結果、多種類の箱の在庫を抱える必要も無くなったという。

このように島根富士通では人にあまり頼らない独自の仕組み作りに力を注いでいる。「これが、中国・台湾勢に対して、我々が競争力を維持し、生き残っていくためのかなりの部分を占めているといっていいでしょう」と山森は語る。


PHOTO 4 一人で何種類かのネジ止めをする工程。つかんだほうの電動ドライバーで使用するネジのシャッターだけ開き、そのネジをとれる。



PHOTO 5 各種シールを貼る工程。流れてきた本体のバーコードを読み取ると、貼るべきシールが入っているボックスの赤ランプが点灯する(写真ではWin XP Proのボックス)。違うボックスに手を入れるとアラームが鳴る。


フレキシビリティに優れた「セルライン方式」

島根富士通では、セル方式とライン方式が混在する独自の「セルライン方式」を採用している。

プリント板の表面実装を行う「SMTライン」が合計11ラインあり、24時間、4班3交代で毎月17万枚を製造。装置(ノートパソコンそのもの)の製造は、セル組み立てを採用し、8セルで1つの梱包ラインを構成、これが4組あり合計32セルで製造を行っている。これは、極端にいえば、32機種の製造を同時並行に進めることができるということでもある。

ちなみに取材当日、1日に1万台を越えるノートパソコンを作っている島根富士通では、冬モデルの生産のピーク。海外向けの従来機種、国内企業向け機種などとともにMGH Seriesも生産されていた。このことからも、同社の製造現場がいかにフレキシビリティに優れているかが分かるだろう(PHOTO 6)。

セルライン方式の導入に加え、以前は離れていたLCD-ASSYを製造するサブ組立と、装置を生産するメイン組立を近くに移設。サブとメインを同期化することにより、無駄な“しかかり(後工程が混んでいて処理できずに待たされている状態)”を減らす努力をしている。工程を見直すshape up活動により、作業工程は面積的にも縮小され、工場内に空きスペースも増えてきた(PHOTO 7)。


PHOTO 6 取材当日は冬モデルの生産ピーク。MGH Seriesも同時生産。



PHOTO 7 shape up活動の“成果”。空いたスペースには、新たな生産ラインを設けたりする。


開発への参加が品質、コスト競争力を高める

品質やコスト競争力の向上を目指す島根富士通の取り組みは、生産工程でだけで行われているわけではない。開発にも積極的に加わり、既に大きな成果を挙げている。

新機種の開発は、前の機種の量産が始まると同時にスタート。前機種の反省点や新機種に活かすべき点を整理・検討してから、開発は本格的に開始される。まず最初に三次元CADによる完成予想図が作成され、それに基づいたモックアップレベルの「Aユニット」とプリント基板を作成する。次に作成されるのが、細部にわたる評価を行うための手作り試作機「Bユニット」だ。このBユニットで、品質面、機能面、デザイン面などの問題点を洗い出し、製品の完成度を高めていくわけだ。ただ最近は、MGH Seriesをみても分かるように、“より高性能に”、“より軽く、より薄く”という設計側からのニーズが高まっており、“より作りやすく”、“ミスを出さない”ことを訴求する工場側のニーズと反比例してきているのが現状のようだ。

製造部装置担当の高橋正志によれば、「Bユニットの時点で、製造効率や品質の向上、作業ミスの解消などの狙いから、我々が出す改善すべき要望項目は、MGH Seriesではおよそ65項目にのぼりました」という。このうち、2割から3割はコスト面や顧客の要望で実現しなかったが、ミスを防ぐ仕組みや注意点を解説したビデオを作成するなどして対処した。

最終的な評価を行うために工場で製造されるのが「Cユニット」だ。ここで出た問題を速やかに解決し、工程内の不良率1.7%をクリアしないと量産を始めることはできない。Cユニットの段階でさらに32項目の改善事項が出た。しかし「MGH Seriesでは、B~Cユニット時点で、事業部と徹底的に議論して問題点を押さえ込み、大半を解決したので、量産初ロットでは特に大きな問題点はありませんでした」(松元)。

「量産に支障がないかどうかを最終判定する会議は、量産開始の2日前に行われます」と高橋。量産開始時にも、初ロットを1モデルあたり100台作成し、監査を全数実施しており、ぎりぎりまで品質を向上させる努力が行われているのだ。もちろん、量産開始後も製造工程における品質は常にチェックされ、着荷障害(お客様に納めて1ヶ月以内の障害)も、原因究明のため同社において修理が行われている。


製造部(装置担当) 高橋 正志


ものづくりの立場から品質向上


品質保証部長 麦倉 睦

このように、島根富士通のスタッフは、富士通の開発部隊、保証技術部隊と緊密に連携をとりながら、ものづくりの立場から品質向上に努めている。MGH Seriesをはじめとする富士通のノートパソコンが、市場から品質面で高い評価を受けているのも、こうした地道な努力の上に成り立っているのだ。

実際、富士通の企業向けノートパソコン「FMV-LIFEBOOK」の信頼性の高さは、米国でも実証されている。米国市場に本格進出して間もない2002年,テクノロジー情報で権威ある米「PC Magazine」誌が選定した「15th Anual Reader's Survey」において、最もトラブルが少ない(修理率8%)と高く評価され、「Editor`s CHOICE」にも選定された。この評価は一過性のものではない。2004年8月17日発行の「PC Magazine」誌や同誌サイト(www.pcmag.com/sr)に掲載された「17th Annual Reader Satisfaction Survey」においても、修理を必要とした率はIBM製品とともに最も低い数字で、すべてのWindowsベースノートPCの中で最も良い結果だった。

島根富士通の品質を基盤から長年支えてきた品質保証部長の麦倉睦は熱っぽく語る。「いわれた通りに作っていたのでは、中国・台湾で作るのと同じ。いかにコストをかけずに品質を高め、早く、いいものを作るか。それを自ら工夫し提案していく。そこにこそ我々の存在意義があるのです。だからいつもみんなに言っています。『下請け根性だけは持つな』と」。

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