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本ページで紹介している機種は2009年10月、2010年1月発表のものです。

携帯性と操作性を極限まで追求したプレミアムモバイル FMV-LIFEBOOK Rシリーズ

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インタビュー「ゼロからスタートした開発が生み出した革新的モバイルPC」

満を持して発表された富士通のプレミアムモバイル「FMV-LIFEBOOK Rシリーズ」。これからの富士通モバイルPCのフラッグシップとなる製品に仕上がっている。設計開発、構造設計、デザインの各担当者がそのコンセプト立案と開発のプロセスについて語った。

嶋崎麻雄氏

富士通株式会社
パーソナルビジネス本部
PC事業部
モバイルノート事業部
嶋崎 麻雄 氏

後藤克一氏

富士通株式会社
パーソナルビジネス本部
PC事業部
PCデザイン技術部
後藤 克一 氏

藤田博之氏

富士通デザイン株式会社
ユビキタスソリューションデザイン部
チーフデザイナー
藤田 博之 氏

藤原 和博氏

富士通デザイン株式会社
ユビキタスソリューションデザイン部
藤原 和博氏

「理想的なモバイルPCのあるべき姿」を求めてプロジェクトが発足

プロジェクトを統括した、パーソナルビジネス本部 PC事業部 モバイルノート事業部 嶋崎麻雄氏は、「通常は、ベースとなる機種を元に改良を加える手法で行うのですが、今回はそうではなく、コンセプトを白紙の状態から考え始めました。本当にビジネスパーソンが望んでいるモバイルPCとは何かを、ゼロベースから検討することにしたのです」と切り出した。

プロジェクトはゼロベースからの検討だけに、従来よりも時間をかけて「理想的なモバイルPCのあるべき姿」が検討された。富士通は、これまでもプレミアムモバイル、すなわち「すべてのPCの機能を持ったモバイルPC」を目指して開発を行ってきた。なかでもビジネス向けモバイルPCにおいては、プレミアムモバイルでありながら、ユーザーが最も重視する軽量・長時間稼働を実現することに注力してきた。 しかし、最近はニーズの変化が感じられていたと、デザインを担当したユビキタスソリューションデザイン部チーフデザイナー 藤田博之氏は次のように語る。

「会社支給であっても、一個人の目線で製品を選び、よりスタイリッシュなものを持ちたいという人が増えています。これが“ビズシューマ”と呼ばれる人たちで、ビジネスツールの選択権を持ち始めています。そういうお客様には、軽くてバッテリーの持ちがいいといったモバイルPCの基本機能を備えているだけでは、満足してもらえません。基本機能はキチンと押さえた上で、見た目にも美しくなければ選んでいただけないようになってきていると感じていました」

こうして「本当に人々が望むモバイルPC」として富士通が打ち出したコンセプトが、「モバイルPCの基本機能である“軽さ” “バッテリーの持ち” “堅牢性”を向上させ、なおかつ美しく、使いやすさを犠牲にしない製品」(嶋崎氏)である。

従来の製品ラインを再検討し、全ての良さを併せ持ったモバイルPCを目指す

富士通では従来モバイルPCとして、法人向けのFMV-LIFEBOOK Bシリーズ、FMV‐LIFEBOOK Qシリーズ(コンシューマー向けにLOOX Qシリーズとして販売)、コンシューマー向けのFMV-LOOX Tシリーズ、という3つの製品ラインを持っていた。Bシリーズは軽量コンパクトながら高度なセキュリティを備えたビジネスモバイル、Qシリーズは約18.2mmの薄さと1kgを切る軽さ、 更に大画面を兼ね備えたウルトラライト&スリム・モバイルPC、そしてLOOX Tシリーズはワンセグ視聴やDVDスーパーマルチドライブ搭載など、コンシューマー向けにエンターテインメント性を付加したライトモバイルである。

Bシリーズ、Qシリーズ、LOOX Tシリーズ

左:FMV-LIFEBOOK Bシリーズ
中:FMV-LIFEBOOK Qシリーズ(コンシューマー向けではFMV LOOX Qシリーズとして 販売)
右:コンシューマー向けのFMV LOOX Tシリーズ

今回「FMV-LIFEBOOK Rシリーズ」の開発にあたっては、上記3製品の特長を併せ持ったPCならば、ビジネス向け、コンシューマー向けに関わらず受け入れられると判断。店頭で見たモデルを自分のビジネスでも使いたい、と考えるビズシューマの存在も意識し、3つの製品コンセプトの「全ての長所の統合」にチャレンジすることになる。ただし、そこには一筋縄ではいかないハードルがあった。

異なるコンセプトで設計された3つの製品の良さを活かしつつ、新しい商品としてまとめるのには、相当苦労したと嶋崎氏は次のように語る。「たとえば、光学ドライブひとつとっても、搭載するかどうか相当議論しました。ビジネス向けでは軽さの他、情報セキュリティの面から光学ドライブ非搭載のモデルを選択されるお客様もいらっしゃいます。そこで、最終的には光学ドライブの有無を選択できるようにしました」

日本的な竹をモチーフに、強くしなやかなイメージを表現

「FMV-LIFEBOOK Rシリーズ」の最大の特長のひとつは、そのスタイリッシュなデザインだ。このデザインはどのようにして誕生したのか。筐体デザインを担当したユビキタスソリューションデザイン部 藤原和博氏は、「モバイルPCは日々持ち歩くものなので、まず視覚的にも強度を感じるデザインを目指しました。それに加えて持っている人が、知的に見えるようなスマートさも追求したいと思ったのです。 さらに、従来からの富士通製品が持つ質実剛健でユーザビリティに優れた点は活かすべきだと考えていたので、デザインに走りすぎて、使いにくくならないよう、見てわかる、操作しやすいデザインを目指しました」と、その基本的なデザイン・コンセプトを語る。

強くスタイリッシュでユーザビリティに優れたPC。言うのは簡単だが、それをすべてイメージできるようにデザインするのは、並大抵のことではない。まずデザインチームは、3つのデザイン案を考えた。まず1つ目が、その強度からダイヤモンドのカットをモチーフにしたデザイン、2つ目が、強くしなやかな竹をモチーフにしたデザイン、そして3つめが、天板の上端(本体と接合する端)のフレームを黒くして強さを打ち出したデザインである。

デザインモックAデザインモックBデザインモックC

デザインモックAは側面を削ぎ落としてダイヤモンドをイメージ。Bはしなやかな竹の曲線を表現。Cは滑らかな曲面と黒いラインが特徴だ。なお、デザインモックの赤色は、コンシューマー向けモデルのカラーである。

この3つを検討した結果、最終的に竹をモチーフとしたデザインに決定した。 その理由についてチーフデザイナーの藤田氏は「富士通のノートPCは世界ブランドです。世界市場でこのPCが活躍する時に、一目見て富士通のPCだと分かって欲しい。さらに言えば、日本のPCとしてのアイデンティティーも持たせたいと考えました。竹のモチーフは、強さとしなやかさを併せ持っており、単に頑丈なだけのPCではなく、優雅さや美しさを表現し、なおかつメイド・イン・ジャパンを雄弁に物語ってくれると考えたのです」と語る。

天板の中央横に入るラインは竹の節をイメージ。デザイン上のアクセントとなっているだけでなく、天板の強度向上に貢献している。筺体側面のシルバーのラインについても、見た目の強さと実際の強度を両立。デザインと構造がうまくマッチングした一例だ。

強さをアピールする竹を模した天板のデザイン。構造的にも強度面で貢献している。

強さをアピールする竹を模した天板のデザイン。構造的にも強度面で貢献している。

ボディサイドにも竹のしなりをモチーフにした曲線があしらわれている。

ボディサイドにも竹の「しなり」をモチーフにした曲線があしらわれている。

また、本体とディスプレイのジョイント部分であるヒンジ(※)の形状も独特だ。この形状は、構造とデザイン両面で意味のあるものに仕上がったという。後藤氏はヒンジ部分を構造面から、「ヒンジを両端に置き、軸心を下側に配置することでディスプレイを開いた時の高さを低く抑え、コンパクトに見せたかった」と語る。デザインを担当する藤田氏は、「ディスプレイの外枠をぎりぎりまで削り、ヒンジ部分が出っ張った変則的な形としました。これにより、ヒンジの強さとディスプレイの枠の細さが表現できたと思います。 また、上から見た時に、一回り小さいディスプレイ面の脇から本体のシルバーが見え、閉じている時にも躍動感のあるデザインになっています」と語る。

※PC本体とディスプレイとの接合部分

Bシリーズとの比較。ヒンジが筐体両側面に位置する構造に特長がある。Bシリーズとの比較。ヒンジが筐体両側面に位置する構造に特長がある。

Bシリーズとの比較。ヒンジが筐体両側面に位置する構造に特長がある。

ヒンジの軸心がボディ後方にあるため、ディスプレイが開いたときの高さを低くできる。

ヒンジの軸心がボディ後方にあるため、ディスプレイが開いたときの高さを低くできる。

お客様の使いやすさを最優先に設計

さらに開発にあたって富士通が最も重視したのは、「ユーザーにとっての使いやすさ」だ。これは、富士通として譲れないポイントだった。構造設計を担当したパーソナルビジネス本部 PC事業部 PCデザイン技術部 後藤克一氏は、「軽さやバッテリーの持ちは、もちろんできる限り追求しました。しかし、何よりもお客様が使いやすいことが第一であり、少しばかりの軽さのために、使いやすさを犠牲にするようなことは絶対にしませんでした」と語っている。

まず彼らが注力したのが、ディスプレイ、キーボード、フラットポイントなどのインターフェース類をできるだけ大きくすることである。

「今後主流となるWindows Vistaは、標準で右横にサイドバー(ガジェットと呼ばれるカレンダーや時計などを表示させる右端のエリア)が表示されるため、ワイド画面が求められます。しかし、従来通りの設計では大きなディスプレイを搭載した分ボディも大きくなってしまう。そこで、ディスプレイの外枠を極限まで細くし、12.1インチのワイドディスプレイを搭載しながらも全体のコンパクトさは堅持しています」(後藤氏)。

Bシリーズとの比較。いかにRシリーズのディスプレイ外枠が細いかが分かる。 Bシリーズとの比較。いかにRシリーズのディスプレイ外枠が細いかが分かる。

Bシリーズとの比較。いかにRシリーズのディスプレイ外枠が細いかが分かる。

Bシリーズとの比較。12.1型のワイドディスプレイ搭載にもかかわらずRシリーズは一回りコンパクトだ。

Bシリーズとの比較。12.1型のワイドディスプレイ搭載にもかかわらずRシリーズは一回りコンパクトだ。

また、画面が広くなればマウスポイントの動作エリアも拡大する。そこで、フラットポイントを従来よりも大きく設計し、何度も指を置き直さなくても利用できるようにした。ボディ幅一杯のキーボードは約18mmという十分なキーピッチと、約2mmのキーストロークを確保、快適なタイピングが可能だ。

Bシリーズとの比較。大型化されたフラットポイントが快適な操作性に貢献。

Bシリーズとの比較。約1.6倍に大型化されたフラットポイントが快適な操作性に貢献。

カードスロットやUSBポートなどの配置にもこだわりがある。これについて嶋崎氏は「単にスペース効率だけを見れば良いのであれば、インターフェースの配置を工夫することでさらに筐体をコンパクトにできるかもしれません。 しかし例えば、頻繁に使うSDカードスロットは、ユーザビリティを考えればやはり前面にあるべきです。同じように、USBポートについても、世の中には右利きの人も左利きの人もいるわけですから、ボディのどちら側にもマウスを接続できるよう、USBポートは左右に必要なはずです。こうした実際の使い勝手に関わる要素については、多少軽さやコンパクトさを犠牲にしても譲れないポイントでした」と話す。

また、ユーザビリティでもうひとつ気を遣ったのは、従来機との互換性だ。 「会社支給のPCの場合、ある日突然、以前使っていたPCと同じメーカーの最新機種がやってくるということがよくあります。その時にお客様がとまどわないように、電源スイッチやセキュリティボタンなど基本的なボタンの配置は、従来機と全く同じにしてあります。お客様にしてみれば言われなければ気づかないような細かいことですが、それこそがユーザビリティであると考えています」(藤原氏)。

従来のFMV-LIFEBOOKシリーズと同様のボタン配置によりユーザビリティにも配慮している。

従来のFMV-LIFEBOOKシリーズと同様のボタン配置によりユーザビリティにも配慮している。

長時間稼働、さらに堅牢性を実現する構造設計へのあくなき挑戦

ビジネスパーソンが1日中持ち歩くことを考えると、構造上の大きな課題は、軽量化と長時間稼働、そして堅牢性の確保だった。これらの課題は互いに密接なつながりがある。例えば軽量化のための部品点数削減は同時に低消費電力による長時間稼働になる、などだ。開発メンバーはひとつの工夫で複数の要件を同時に向上させる、様々なアイデアを出し合った。

軽量化については、まずベースとなる3製品の部品すべての重さを計量し直し、解析することから始めた。天板と底板の素材には、強度があって軽いマグネシウムを採用。さらに、キーボード側にプリント基板を固定することで、軽量化を実現した。

後藤氏は、「従来は底板にプリント基板を固定していたため、衝撃に強くなるよう底板を厚くしていました。そこで、今回は逆転の発想で、プリント基板をキーボード側に固定することにより、従来よりも底板を薄く、軽くすることができたのです。このことは同時に堅牢性にも大きく貢献しています。見ていただくと分かりますが、プリント基板をはじめとして全ての部品はキーボード側に配置されているため、底板から外圧がかかってもそれが直接基板などの部品に及ぶことがないのです」と説明する。

キーボード側に固定されたプリント基板。底板との間には空間ができ、外圧から部品を守る。

キーボード側に固定されたプリント基板。底板との間には空間ができ、外圧から部品を守る。

長時間稼働についても、軽さと同様従来の各部品の電力消費量をすべて調査。最も電力消費量が少ないものを選ぶとともに、主要チップの配置パターンをシミュレーションし、できるだけ全体の効率がよくなる設計を目指した。 「最適な配線を検討するために何十通りものパターンをシミュレーションしました。これによって基板自体も小型化しているので、長時間稼働のための低消費電力達成だけでなく、軽量化にもつながっています」(嶋崎氏)。

Bシリーズとの比較。基盤が大幅に小型化され、低消費電力と軽量化を両立。

Bシリーズとの比較。基板が大幅に小型化され、低消費電力と軽量化を両立。

一方、単に軽さ・薄さを追求するよりも、ユーザビリティへの配慮を優先した例もある。Windows VistaはCPUパフォーマンスが要求されるため、インテルの最新デュアルコアCPUとチップセットを採用しているが、その分どうしても発熱量が多くなる。そこで、前述の配線パターンの工夫によりできるだけ発熱を抑える設計を行うとともに、従来のBシリーズよりも厚みを増した大径のファンを新たに設計。ファンの回転数を抑制しつつ十分な風量を確保し、高性能でありながら静かなPCに仕上げた。

Bシリーズとの比較。ファンは大型化され、冷却効率と静音性を両立。

Bシリーズとの比較。ファンは大型化され、冷却効率と静音性を両立。

ビジネスモバイルPCの新たなステージが始まる

このような多くのアイデアと工夫が形となったRシリーズ。藤原氏は「大きさと使い勝手のバランスが高次元で統合された製品に仕上がったと思います。どんなモバイルシーンでも使いやすく、持った姿がスマートで知的に見えるPCだと思うので、ぜひいろいろな場所で使っていただきたいですね」と胸を張る。

また藤田氏は「この機種から富士通のビジネスPCが変わるという意気込みでデザインを仕上げました。店頭でコンシューマー向けモデルを見て購入を検討されるお客様も多いと思いますが、そうした店頭インパクトにも大きく影響するのがデザインです。見た瞬間にスタイリッシュさや強さなど、製品の本質を伝えるという部分では、製品に少なからず貢献できたんじゃないかと考えています」と話す。

後藤氏は「とにかくお客様にとって何が一番使いやすいか、ということにこだわって作ったモバイルPCです。大きなディスプレイや、日常で常に使うスペックは絶対に犠牲にしないで、なおかつバッテリーライフや軽さなどを突き詰めました。その使いやすさを実感していただけたらと思います」と製品コンセプトに自信を見せる。

最後に嶋崎氏は、「Rシリーズという名称は、Real Mobile、Revolutionなどの意味が込められており、革新的かつ本格的なプレミアムモバイルを目指して、新たにゼロベースから取り組みました。それだけに苦労も少なくありませんでしたが、できあがった感慨もひとしおです。自分たちでも自信を持って世に出せる製品だと信じています。PCはあくまでも道具ではありますが、それだけでなく使うことがお客様の喜びになれば、これ以上嬉しいことはありません」と締めくくった。