池田 昌憲 氏
村形 悟 氏 |
公共工事の着手に先立って近隣家屋の現況を事前に調査する工損調査は、一般家庭に入り込んで作業をするため、短時間に効率よく、高い精度で調査を行うことが求められていた。株式会社償研では、この課題を解決するため、富士通のタブレットPC「FMV-STYLISTIC TB12/R」を利用する、株式会社ワンストップが開発した画期的な工損調査ソリューション「ノンチェック」を採用。精度の高い現地調査とタブレットPCによる現地でのデータ処理により、従来、延べ1週間かかっていた報告書作成を、約半分で仕上げることに成功した。 一発勝負の現場で、手早く精度の高い調査が求められる工損調査償研は、秋田県秋田市で、補償コンサルタントを行う技術者集団である。補償コンサルタントとは、公共事業に必要な土地の取得や、使用に伴う損失の補償に関する調査、補償額算定などを行う仕事だ。 その補償コンサルタントの仕事のなかに工損調査業務がある。具体的には、公共工事に先立って現場に隣接する家屋の現状を確認し、調査報告書にまとめる事前調査業務。万一後日損害等が発生した際に、この事前調査報告書を基に事後調査を行い、比較検討することで、補償が必要かどうかが検討される。工損調査の実際は、一般家庭(調査対象建物)に半日程度入らせてもらい、その建物の図面を起こし、各部屋の壁などの損傷箇所を詳細に記録していく作業だ。
償研の従来の現場での作業手順は、まず手作業で図面を起こすところから始まる。次に、看板にチョークなどで、日付、家屋の所有者、部屋名、損傷の通し番号、損傷の名称(亀裂、クラックなど)とサイズなどを書き込み、損傷と一緒に写真撮影を行っていた。写真撮影と同時に、図面にどの場所でどの方向から撮影した損傷かを、撮影時に看板に書いた通し番号で記していく。 事務所に戻ってからは、調査員が現場で書いた図面と写真を見ながらつけあわせて、損傷の一覧など必要な報告書の下書きをし、それをオペレーターが入力。報告書を仕上げるまで、数度にわたる確認と修正が必要だった。池田氏は、家屋調査の難しさについて次のように語る。「一般家庭に入らせていただくわけですから、なかなか失敗したからもう一度見させてください、というわけにはいきません。しかも限られた時間と人員で、手早く作業を進める必要があります。一発勝負で、しかも精度を上げることが求められていました」 工損調査の業務効率と調査精度向上に改善を積み重ねるも限界が
これらの課題を解決するため、償研では、撮影用看板を工事用黒板からホワイトボードにし、あらかじめよく使う言葉をマグネット加工し貼り付けたり、よく使う言葉をボードに書いておいて、該当箇所に色玉のマグネットを貼るなど、さまざまな改善により現場作業の効率化を図ってきた。 しかし、看板の工夫だけでは限界があったと償研の村形氏は次のように語る。「どうしても看板の通し番号の振り間違いが起こるので、ヌケや重複が出たりします。また、部屋名の消し忘れなどで写真に写った看板の記載と図面が合わないといったことが、かなりの頻度で起こっていました。結局、現場での作業の精度が高くないと書類作成時の確認に、よけい手間がかかってしまいます。また、黒板は粉が落ちるため、家庭ではいやがられるのでホワイトボードにしたんですが、これはこれで雨の日の外の作業で使えないという問題がありました」 このような課題に加えて、償研では日頃から「少ない人数で効率的に業務がこなせるしくみはないか」と考えていた。そんなときに池田氏が出会ったのが、家屋調査の効率化を可能にする、ワンストップが開発したソリューション「ノンチェック」だった。 タブレットPCを看板とする画期的なシステムで工数が従来の1/2に償研が2005年5月に導入し利用を始めた「ノンチェック」は、富士通のタブレットPC「FMV-STYLISTIC TB12/R」を看板として利用するという画期的なしくみである。 タブレットPCの使い勝手について村形氏は、「タブレットPCは、軽くて持ちやすく、ペンでタッチするだけなので操作も簡単です。バッテリーの持ちも良く一日使っても問題なく動きます。メニューにない文字を入力する必要があっても、手書き入力ができるところもいいですね。さらに、本体サイズがホワイトボードの看板に比べて遙かにコンパクトなため、以前より損傷箇所に近寄って写真を撮ることが可能になりました。以前は、大柄な看板を画面に入れるために損傷の写りが小さくなる、ということがあったのですが、これにより、損傷もくっきり撮影できるようになりました」と言う。 「ノンチェック」を用いた看板の作成は、部屋の名前と損傷の名称やサイズをペンでタッチして選択するだけ。自社で簡単に項目名などを登録できるので、自社でよく使う名称を登録することが可能だ。損傷の場所や大きさなど、報告書に必要な情報が、現場ですべてデータ化されるため、従来調査員が事務所に戻ってから下書きをし、オペレーターが入力し直す作業がなくなり、その間の手間や打ち間違いが生じる余地がなくなった。「ノンチェック」の導入により、「報告書作成までの時間は、だいたい半分になりました」と村形氏も高く評価している。
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株式会社ワンストップ 代表取締役
株式会社ワンストップ クリエーター |
いつの時代も、業界外の人間が、革新をもたらすそもそもワンストップは、なぜこの「ノンチェック」を開発したのだろうか。増田忠春氏は、父親の経営する補償コンサルタントの2代目。もともと、この業界生粋の人間ではない。20代の頃、東京のCM制作会社で大手企業の企画の仕事をしていた。この経験から、同業者が思い付かない方法を実践し、競合各社を取りまとめて、卸と直接取引をすることで、写真の現像代や備品代を40%コストダウンしたり、撮影ミスを最小化する「光らない看板」を開発するなど、業務改革に熱心だった。そこに、業務の効率化に精通した元生産技術エンジニアの難波旭良氏が入社してくる。当時、「この業界にはまだ合理化できる部分が多くあると感じていた」と言う。 そして、増田氏の業界の業務改革・改善を進めようという熱意、難波氏の情報技術と業務効率化をふまえたアイデアがうまくかみ合い、「ノンチェック」の開発が始まった。 難波氏は入力画面を作る際に気をつけた点として、「人間工学の観点から、直感的にわかりやすい画面にすることを気をつけました。画面上に必要以上の選択肢が出て作業者が迷うことのないよう、最小限の選択肢の中から最短時間で入力できるようにしました。使い込むうちに選択肢を文字として認識するのではなくビジュアルと位置で読まなくても選択できるインターフェースにしたつもりです」と言う。さらに、現場も一丸となって開発に協力し、ボタンの位置ひとつについても、実際の作業で何回押したかをカウントするといった地道な作業を繰り返し、より現場で使いやすいシステムにすべく改良が積み重ねられていった。 ■「ノンチェック」によって作成した台帳の例。
反射型液晶搭載「FMV-STYLISTIC TB12/R」あってこそのシステムそれと同時に困難を極めたのが、タブレットPCの機種選定である。ワンストップは、タブレットPCを出しているメーカー各社と交渉し、国内で手に入るほとんどすべてのタブレットPCで実験を行った。その中で唯一屋外で写真に写すことが可能だったのが、富士通のタブレットPC「FMV-STYLISTIC TB12/R」だったのである。「FMV-STYLISTIC TB12/R」以外の機種で屋外で撮影をすると、すべて太陽光に負けて、真っ黒になってしまう。その点、「FMV-STYLISTIC TB12/R」は、屋外でもクリアな画像を可能にした反射型カラーTFT液晶を搭載しており、写真撮影が可能だった。増田氏は、富士通と「FMV-STYLISTIC TB12/R」について、「このノンチェックに利用できるタブレットPCは、現在のところ『FMV-STYLISTIC TB12/R』以外には考えられません。われわれのお願いにも親身に対応していただいた姿勢にも感謝しています」と語る。
なお、償研ではまだ利用していないが、「ノンチェック」にはペン入力で高速に作図可能なCAD「ツー・クリックCAD」を搭載しており、その場で素早く図面を書くことが可能。これを利用すれば、看板の番号と図面の連動が可能になり、事務所に戻ってCADで図面を起こし直し、写真と図面を付け合わせながら撮影箇所を記入する手間がすべてなくなる。 この「ツー・クリックCAD」が可能になったのも、「FMV-STYLISTIC TB12/R」のカーソルの追従性によると難波氏は次のように言う。「従来のペン入力は、カーソルの追従性がないため、これから描こうとする図形を下書きのように照らし合わせながら作図することができず、間違った図形を描くことが多かったのですが、『FMV-STYLISTIC TB12/R』はそのようなことがなく、使い勝手の良いCADができました」 「ノンチェック」は補償コンサルタントに特化したシステムだが、開発した難波氏は、「不動産業や土木業など、現場でパターン化された文字データの入力や図面を作る業種であれば、すべてに応用可能だと思います」と語る。 ■従来の手書きの図面。
■「ノンチェック」に搭載の「ツー・クリックCAD」による図面作成。
CADの利用で一層の生産性向上を目指す「ノンチェック」により現場での精度の高い調査が可能になったため、従来の約半分の時間での報告書作成を可能にした償研だが「最も劇的に効率化できるのはCADの部分。ぜひこれにチャレンジして欲しい」とワンストップの増田氏は激励する。ワンストップでの実測によると、タブレットPCに搭載したCADを現地で利用することによって、なんと従来の工数よりも20分の1に削減できたという。 「確かに慣れるまでは、その場で手書きをした方が速いと思われるでしょうが、その後事務所で下書きを元にCADで図面を起こし、何度も写真と付け合わせて撮影位置を入れていく作業には、相当時間がかかっているはずです。現地でCAD入力をして、その場で撮影箇所を入力していけば、その後の作業がなくなり、本当に現場で作業が完結してしまうのです」と難波氏も語る。償研でもその点は検討課題としており、今後CAD入力にもチャレンジしていく予定だ。また、タブレットPCの台数も増やし、現在3人1組のチーム編成を2人1組にし、さらなる効率化を目指す。 すっかりタブレットPCを使ったこのソリューションに惚れ込んだ償研の池田氏は、今後自社だけでなく、業界への普及に尽力したいという。従来不可能だった屋外での活用を可能にした富士通のタブレットPC「FMV-STYLISTIC TB12/R」は、今後もさまざまなソリューションを提供していくことだろう。 User's Voice
User's Profile 株式会社償研 昭和60年代から秋田県秋田市で、補償コンサルタントを行う技術者集団。看板を工夫したり、エクセルで帳票が簡単にできる仕組みを作るなど、元々業務の効率化に熱心に取り組んでいた。「ノンチェック」と出会い、今後は自社で利用するだけでなく、広く同業に広めていきたいと意欲満々だ。 〒010−0953 秋田県秋田市山王中園町7−19 Tel. 018−866−3422 ノンチェック開発元 株式会社ワンストップ 岡山県に本社を置く補償コンサルタント会社を母体としたベンチャー企業。補償コンサルタント向けに特化したソリューション「ノンチェック」をメインに現場が使いやすいソリューションを開発・提供している。アナログ業界での問題点抽出と解決手法を導き出す技術を生かし、他業種への展開にも精力的だ。 〒700−0945 岡山県岡山市新保654−13 Tel. 086−246−4855 製品紹介 タブレットPC「FMV-STYLISTIC TB12/R」
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■「ノンチェック」のインターフェース画面。
ペンで直感的に操作できるよう設計されている。