このページの本文へ移動

FMV-STYLISTIC 開発物語

FMV STYLISTIC LOGO
富士通のタブレットPC FMV-STYLISTIC
詳細はこちら
富士通の開発秘話薄さ、操縦性、デザイン ペン入力PC10年の蓄積
リード

デスクトップPCでもなければ、ノートPCでもない--まったく新しいコンセプトのタブレットPCが、富士通のFMV-STYLISTIC。それは、「机の上のキーボードやマウス」という従来のPCのカルチャーから解き放ち、「いつでも、どこでも、手書きで」という新しいPC駆使の世界を実現します。

様々な場所からインターネット・アクセスも可能。もちろん、ドッキングステーションに取り付け、キーボード操作で従来のPCのようにも使えます。

そんなFMV-STYLISTICが生まれるきっかけとなったのが、2000年11月、米国ラスベガスで開かれた世界最大級のIT見本市、COMDEXです。

ペンパソコンでの蓄積がタブレットPCでできる

モバイルPC事業部第二技術部嶋崎麻雄

2000年11月のこのCOMDEXで基調講演に立ったマイクロソフトのビル・ゲイツ会長は、「タブレットPC」という新しいパソコンのコンセプトを提案しました。手書き文字や図形がそのまま入力・保存できるのです。この時に紹介された試作機は、大いに来場者の注目を集めました。その中でも特別な感慨を持ったのが富士通の技術者たちです。実は富士通ではペン入力タイプのPCを「FM PenNote」の商品名で、10年以上前から主に海外市場向けに販売、ユーザーから高い評価を得ていたからです。

「私たちが考えてきたコンセプトに近い。この専用OS(Windows(R) XP Tablet PC Edition)を使えば富士通のノウハウを活かして、今までにない使いやすいPCを開発できるはず」。FMV-STYLISTICの回路設計を担当した嶋崎麻雄(モバイルPC事業部第二技術部)は、当時そう確信したと言います。

ペン入力PCは、90年代初期に、一時ブームに近い盛り上がりを見せ、多くのPCメーカーが参入しました。しかし、流通関係業務などでは多く使われたものの、一般的なOA業務にまで広がるには至らず、多くのPCメーカーがこの市場から去って行きました。そうした中で頑なにペン入力PCにこだわり続けたのが富士通でした。

「ユーザーがどんな使い方をするのか、一番よく知っているのは私たちだという自負はありました」。多くの技術者が嶋崎と同じ思いを抱きました。

「もっと薄くならないか」

第二技術部佐藤正彦

マイクロソフトと富士通は、密なチームワークでタブレットPCの開発を進めることとなり、OSとハードウェアがスムーズに連携するよう、開発の初期段階から頻繁に技術的なやり取りをしてきました。

翌2001年11月のCOMDEXに、富士通はFMV-STYLISTICのプロトタイプをいち早くお披露目したのは、実際に使う側であるユーザーの声を聞き、今後の商品企画に活かす目的でした。そうして、2001年もわずかとなり製品設計もほぼ完了した年の瀬のある日、モバイルPC事業部長の五十嵐が開発チームのもとを訪れ、こう指示しました。「もっと薄くならないか」。事業部長の一言を受けて、設計は一からやり直しとなります。事業部長があえて、この時期にこの指示を出したのは、ユーザーの使い勝手への強いこだわりがあったからです。それまでのFM PenNoteは専ら企業向けでしたが、今回のFMV-STYLISTICは個人、企業向けの両方を視野に入れた製品。そのことを考えれば、もっと薄くて、軽くて、携帯性に富み、しかも堅牢であることが不可欠というのです。

そうは言っても、開発チームは頭を抱えました。薄くするには、新たにクリアしなければならない様々な問題が発生するからです。例えば、堅牢性です。

「衝撃に対してデリケートなハードディスクを守るには、その周辺にある程度隙間を設けて衝撃を吸収するようにします。それまででも薄くするためギリギリの設計になっていますから、さらに薄くするとなるとその空間がなかなか確保できないのです」と当時を振り返るのは、構造設計を担当した佐藤正彦(第二技術部)です。

また放熱の問題もよりシビアになりました。「薄くしたことで、熱を逃がすための空気の通り道がうまく確保できないのです」(佐藤)。しかし最後に、ある部分に1枚のフィルムを貼り付けることで解決したといいます。たった1枚のフィルムが風の道をうまく造ったのです。「後になって、なぜすぐ気づかなかったのかと思いましたね」(佐藤)。

デザインチームの要求も、構造設計、回路設計のハードルを高くしていました。FMV-STYLISTICの本体は、ディスプレイ側の幅よりも底面側の幅が短い台形断面になっています。その分、部品を置くスペースが削られるのです。

「通常の弁当箱型だと机の上に置いた状態から持ち上げるときに、指の引っ掛かりがありません。持ちやすく運びやすい、持ったまま書きやすいし人にも見せやすい形が前提ですからね」。デザインを担当した川見充彦(総合デザインセンタープロダクトデザイン部チーフデザイナー)は、強く主張しました。デザイン・コンセプトは“Grab & Go”、つまり「つかんで持っていけるPC」というわけです。川見らの意見には、設計チームも納得せざるをえませんでした。
総合デザインセンタープロダクトデザイン部チーフデザイナー川見充彦

ドッキングステーションの接合部分開発には苦労したが特許に

FMV-STYLISTICを机上でデスクトップPCとして使用するためのドッキングステーションとの接合部分も、工夫を凝らしたポイント。最も開発に苦労したのが、PC本体と接合するコネクタです。この部分が、FMV-STYLISTICの使いやすさ、携帯性、堅牢性の鍵を握るからです。

「本体をドッキングステーションにセットする時、機械でやるわけではないので、どうしてもぐらつきながら、コネクタと接合することになります。それはコネクタに大きな力の負荷がかかり、接触不良の原因にもなります」(佐藤)。このため、ドッキングステーション側に本体ガイドを設け、位置決めが完了した後、コネクタがせり上がりながら接合するようにしました」と佐藤は説明します。

 また、タテ表示とヨコ表示が切り替わる画面も、FMV-STYLISTICの大きな特徴です。ドッキングステーションに本体を置いて作業するとき、本体をタテからヨコ、ヨコからタテに回転させると画面も90度回転します。本体を回転させるとスイッチで切り替わるのです。こうした接合部分のメカニズムは、特許を取得することができました。

実は、このタテ・ヨコどちらでも使えることは、純粋なデザイン面からも、激しい議論があった点です。FMV-STYLISTICは、基本的にはタテ画面での操作することを想定しています。


モバイルPC事業部第二技術部課長福世正志
「実は、前世代機も含め、それまでFM PenNoteはすべてヨコ画面でした。しかし、シリコンバレーにある富士通米国法人のマーケティングチームから、タテ型にすべき、との意見が寄せられました。米国をFMV-STYLISTICの最大市場と想定していたこともあり、彼らの意見を取り入れました」(嶋崎)。コードレスで本体とつながるキーボードをギリギリまで薄くしたこと、さらに、FMV-STYLISTICという命名も米国マーケティングチームの意見を反映したと川見は言います。

2002年11月のCOMDEXの10日前。PC関係者、先進的PCユーザーの間で、タブレットPCへの期待が高まっていたちょうどその時、FMV-STYLISTICが世界で同時発売されました。もちろんCOMDEXにも展示され、多くの来場者の関心を集めました。

2003年6月。既に量産体制も軌道に乗り、市場に続々出荷されていますが、開発メンバーの仕事は終わっていません。早くも次期モデルのイメージを膨らませています。

「今後もさらに薄さと使いやすさを追求して、紙を扱うような感覚で操作できるものに進化させていきたいですね」と、製品化の全体の取りまとめに当たった福世正志(モバイルPC事業部第二技術部課長)は語ります。薄さへのチャレンジ、操作性へのこだわりは、これからもFMV-STYLISTICの本質であり続けることでしょう。
開発メンバーと試作品


 FMV-STYLISTIC