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訪日旅行者の移動を支える画期的な交通案内サービスが話題

 昨今、訪日外国人観光客たちを大いに悩ませている問題のひとつが、日本の複雑な公共交通事情である。JTB総合交通研究所のリポート『訪日外国人旅行者の概況と訪日中の情報収集について』によると、「訪日観光客が旅行中に困ったこと」の上位10項目に、3つも公共交通系の悩みがランクインしている。
具体的には3位=「目的地までの公共交通の経路情報入手」(10.5%)、5位=「公共交通の利用方法と料金」(7.3%)、8位=「公共交通の乗り場情報の入手」(3.2%)である。ちなみに、1位はダントツで「無料公衆無線LAN環境」(23.9%)だった。
 地下鉄や鉄道路線だけでも複雑だが、バスや船舶等の「二次交通網」を含めると、日本人でもなかなか使いこなすのが困難になる。そこで、訪日外国人観光客向けの多言語総合交通案内サービスの必要性が叫ばれているのだが、そんなソリューションをいち早く手がけているのが、ジョルダン株式会社。『乗換案内』の開発・販売で知られる同社のインバウンドへの取り組みについて、聞いてみた。

インバウンド需要を喚起したい観光地に向けて展開

「当社が、いわゆるBtoBtoC(※Business to Business to Consumer)の形で展開しているのが、『乗換案内Visit』です。これは当社の経路探索エンジン等の技術を活用して、外国人観光客の方に特化したサービスとなっています。じつは当社では、以前から『乗換案内』の多言語版である『Japan Transit Planner』をWebとアプリで展開しており、インバウンドには早期から取り組んできました。ただ、これはBtoCの自社サービスでしたが、『乗換案内Visit』に関しては、おもに地方自治体やDMO(観光地経営組織)といったインバウンド需要を推進する団体に向けてBtoBtoCの自社サービスとして展開しているものです。

 一例として、せとうちDMO(広島市)が運営する観光情報サイトである『瀬戸内Finder』が、弊社のソリューションと連携しています。同サイトでは、瀬戸内海の航路を手軽に利用したいという旅行者の声に応えて、110社138航路149系統の航路情報を収集し、多言語による交通情報をマップと連動させて提供しています。既存の観光サイトでは、アクセス情報が概要レベルに留まっており、実際にサイトを見て行こうとしても難しい。そのため、改めて、『交通事業者の公式サイト』や弊社の『乗換案内』、『グーグルマップ』などで経路検索をする方も多いと思います。
 地域の魅力を発信しつつ、公共交通の総合案内サイトとして、何ができるだろうかという発想で『乗換案内Visit』の開発を進めてきました。瀬戸内海の航路は非常に複雑で、この規模の海域に100を超える航路が集中しているのは、世界にも類を見ないと思います。ある島に行くには、どこから何時の船に乗ればいいのか、その情報を一元的に見たいという声は以前からありました」(ジョルダン株式会社 法人本部 法人営業部)

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 これまでは、中国・四国地方の6県におよぶ瀬戸内の航路を一元的にまとめた媒体が存在しなかった。したがって、島のアクセス情報を調べるには複数のサイトを検索しなければならず、観光客の利便性が問題視されていたのだ。ジョルダンの技術提供により、『瀬戸内Finder』では、航路時刻表、運賃、運営会社情報、マップ(乗り場や寄港地等)といった膨大な航路情報を集約させるとともに、英語や中国語繁体字など多言語による情報開示を実現させている。

技術的には13言語OK。過去に培った多言語対応の資産が武器に

「船舶の場合は季節によって運航時刻が変わったり、ドックダイヤと言って船のメンテナンスに伴う運休などがあり、情報の変動も多いのです。そういった変動もすべて対応しています。
『瀬戸内Finder』向けでは、3言語対応ですが、弊社の『乗換案内Visit』自体は、さらに中国語簡体字、韓国語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語などにも対応しています。もともと弊社の『Japan Transit Planner』においては、フランス語、ロシア語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、アラビア語など13言語に対応しているのですが、予算の関係などでBtoBtoC市場においては、そこまでの多言語に対応しておりません。ただ、技術的には対応可能ですので、たとえばヨーロッパからの観光客が多いエリアであれば、フランス語やドイツ語を加えるといった対応は今後増えてくると思われます」

 もともと同社では、日本在住の外国人を対象として、多言語対応を強化してきたのだが、近年はインバウンドのニーズを意識して、それに特化する形で『乗換案内Visit』の開発につながった。もちろん、これまで蓄積された技術的な資産が今回も活かされていることは間違いないだろう。
 瀬戸内以外の活用例としては、『新しい東北』(復興庁)、山陰インバウンド機構(鳥取県米子市)のほか、東京都港湾局や羽田空港でもジョルダンのソリューションが活用され、訪日観光客の移動を支えている。

「経路検索に加えて、『乗換案内Visit』ではイラストマップの活用に力を入れています。緯度経度付きのイラストマップを活用することで、視認性も向上し、楽しく検索できるはずです。観光スポットを探すにしても、たとえば城や神社が名称だけでなく、イラストで表示されていればイメージが浮かびやすいでしょう。外国人の方にもイラストなら一目瞭然ですからね。団体ではなく、個人旅行をされる訪日観光客の方が、自分で計画を立てて、自由に効率よく回りたいというルートを作成するのに、便利に使ってもらえるように意識しています」

 観光客の評判は上々で、特にイラストマップが見やすいという声が多いという。現在も全国各地からオファーがあり、今後の需要増も見込まれている。

「単純な経路検索や時刻表の案内に留まらず、日本を初めて訪れる観光客の方が迷うことなく、さらに各観光地を訪問しやすくするための機能を随時追加していきたいと考えています。インバウンド市場においては、まずは弊社の得意分野である交通情報をより極めて、交通情報ならジョルダンと言われる随一の地位を確立したい。いずれは海外の交通情報までを案内できるようになりたいのですが、なかなか手が回りません。ただ、世界的に見て日本の交通網は世界一複雑だと考えていますので、日本でこの分野を極めれば、世界のどこの国へ行っても対応できると思います」

 ジョルダンでは、将来的には、バスに乗車して『乗換案内』アプリをかざせば運賃が決済できるとか、チケット予約も可能になるといったサービスまでを視野に入れているという。『乗換案内Visit』は、まだ導入例こそ多くはないが、インバウンド市場での注目度は高い。訪日観光客の需要増を狙う地方の観光地にとっては、ひとつの切り札になっていくかもしれない。

文/コネクティプス編集部

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