フレームワークをテンプレートに登録、テーマによって使い分け

大手広告代理店を経て独立し、現在はコンセプトクリエイターとして活躍している小山龍介さん。新規事業や新商品などの企画立案を生業としている。そんな小山さんが「クアデルノ」を手にしてまず意識したのは、“ノートとは別物として捉える”ことだった。

「『電子ペーパー』と聞くと紙のノートと比較しがちですが、そこを起点にしないほうが良いと感じました。そこでまず『クアデルノ』を横向きに持ってみたんです。

人間の視野は横に広いので、縦よりも横向きのものに書かれた情報のほうが俯瞰しやすい性質があります。そのため、アイデアを自由に広げたいときは、横向きのほうが向いているんです。ノートというよりは自由に発想するための“キャンバス”として使うイメージですね。ちなみに縦向きでの使用は、箇条書きなど情報を整理するときにオススメです」

「クアデルノ」を横向きにして使うなかで、特に相性の良さを感じたのが、フレームワークだという。ビジネスパーソンにとってなじみ深いものだが、小山さんは仕事のときだけでなく、准教授を務める名古屋商科大学・大学院ビジネススクールの授業でも活用している。

「フレームワークのフォーマットをPDFデータにして、『クアデルノ』にテンプレート登録しています。そうすれば簡単にフォーマットを呼び出せるので、思いついたときにすぐ書き始められます。また、ページをスワイプするだけでフォーマットが書かれたページを複製できるのも便利。書き込んだ内容がすぐPDFデータになるので、学生たちとも簡単に共有できます」

活用法01

自分に合うテンプレートを登録してノートを作る

↑新規事業のアイデアを可視化するフレームワーク「ビジネスモデル・キャンバス」。顧客セグメント/価値提案/リソース/キーパートナーなど、9つの項目で構成されている。小山さんはこのフォーマットを「クアデルノ」のテンプレートに登録して活用している

↑小山さんが使用する「クアデルノ」のテンプレート選択画面。PDF化したフォーマットを専用アプリでテンプレート登録すれば、新しいノートを作成する際に登録したフォーマットも選べるようになる。小山さんは数種類のフレームワークを登録している

アイデアの可視化や情報の整理に活躍するフレームワーク。代表的な例としてポジショニングマップやイメージマップが浮かぶが、「フレームワークそのものも、時代の流れや研究によって、新しいフォーマットが生まれている」と、小山さんは語る。

「フレームワークというと、以前はロジカルに考えていくものが多かったのですが、最近はアイデアをスケッチしていくような使い方が増えてきました。書き出すことでアイデアがつながっていく、文字どおり“キャンバス”です。

『クアデルノ』をキャンバスとして使えば、デジタルなので場所を取ったり、いちいちスキャンしたりせずに、過去のスケッチを気軽に溜めておくこともできます。

ちなみに、こうしたアイデアの出し方を紹介している書籍もあります。イリノイ工科大学の教授であるヴィジェイ・クーマー氏の著書『101デザインメソッド』(英治出版)には、様々なフレームワークが紹介されているので、自分の仕事やスタイルに合うものをピックアップして、『クアデルノ』にテンプレート登録しておくのもいいですね。

また、私が翻訳を手掛けた『ビジネスモデル・ジェネレーション』で紹介されている、事業開発の定番ツールである『ビジネスモデル・キャンバス』(翔泳社)も、『クアデルノ』を使うと簡単に書き込めます。
いろいろと試していくなかで、自分の考え方や情報を整理するときに、どれがマッチするかも見えてくると思います」

活用法02

フレームワークを描いてアイデアを広げる

↑小山さんが「クアデルノ」に描きながら説明してくれた、編集工学の基本となる5つのフレームワーク。「アイデアを広げる思考法として、まずはこの基本の5パターンを知っておくといいですよ。こういった内容は、言葉よりも視覚で説明するほうが伝わりやすい。『クアデルノ』ならそれが簡単にできます」(小山さん)

私たちは、デバイスによって無意識にアウトプットを変えている

デジタルデバイスがあふれている現代では、それらのデバイスを自分らしく使いこなすためのスキルが必要となってくるが、小山さんはどのように使い分けているのか。

「私のなかでPCは、形になったアイデアを文章やプレゼン資料に仕上げるためのツール。その前にある“アイデアを生み出す”という抽象的な作業はキーボードではできません。

物事を探索的に考え、言葉にならないイメージやビジョン、ぼんやりと考えていることを可視化していくには、“手で自由に書くこと”が重要なのです。

例えば、新しい形態の抹茶カフェをオープンさせるとして、どのようなロゴがお客様の心を掴むのか、文字だけで考えるのは難しいでしょう。“茶”という漢字の草かんむりを湯気に見立てるといったアイデアが思いついたとき、文章でメモするよりもイラストで描いたほうが、思考が広がっていく可能性が高まります。

そういったときは手書きのできるツールを使うのがいい。なかでも『クアデルノ』は軽量で持ち運びしやすいので、常にかばんに入れておけばアイデアの書き漏らしを防げます。また起動が早く、思い立ったときにすぐ書き出せるのも魅力です」

活用法03

アイデアを思いつくままに描き出す

↑「茶」という文字から広がるアイデアを、思い付くまま描き出していく。「クリエイターやデザイナーがやっているような思考法ですが、これからの時代、ビジネスシーンでも既成概念に縛られないアイデアやイノベーションを起こすのに有効です」(小山さん)

働き方だけでなく、生活スタイルも大きく変化するなかで、小山さんはどのようにして新たなコンセプトを生み出していくのだろうか。

「アイデアさえもAIが生み出せる時代がやってくると言われています。しかしAIは、“暑い・寒い・痛い”といった身体的感覚をデータとして学習することはできますが、体感として理解しているわけではありません。私は、AIでさえも発見できていない新しいアイデアや概念は、人間の身体感覚から生まれるのではないかと考えています。

先ほどから“キャンバス”や“アイデアスケッチ”といった表現をしていますが、あのレオナルド・ダ・ヴィンチも、膨大な数のスケッチを残していました。こうした手を動かすという身体感覚を伴った試行錯誤を経て、彼は新しい価値観を誕生させていったのです。

私にとって『クアデルノ』は、頭の中の着想とアウトプットを繋ぐ橋渡しのような存在。直感的なイメージや自分の身体感覚を生かして、オリジナルの発想を生み出していくためのツールです」