“百戦錬磨”のジャパン・メイド・スマホ
「arrows Be3」の秘密

“百戦錬磨”のジャパン・メイド・スマホ</br> <b>「arrows Be3」の秘密</b>
「arrows Be3」の特徴のひとつが、防水機能。泡タイプのハンドソープで洗える

私たちのライフスタイルには、もはやスマホは不可欠なツールだ。世界中の各メーカーがしのぎを削り多種多様なスマホが開発されている中、ジャパン・メイド・スマホとして注目されているのが、富士通コネクテッドテクノロジーズ(略称=FCNT)が手掛ける「arrows Be3」。日本らしいモノづくりを紐解くために、「arrows Be3」が生産されている兵庫県の工場を訪れた。そこには、高品質と高信頼を裏付けるリアルな作業と、将来的な日本のモノづくりの風景が広がっていた。

カラーは、右からブラック、ホワイト、ピンクの三色展開。背面には、指一本で操作可能な独自のセンサー(Exlider)付き

用の美が追及された
「arrows Be3」

「arrows Be3」の注目ポイントは、デザインと機能性が両立されていることだろう。見た目には、シャープで繊細なデザインなのに、いざ使用してみると想像以上にタフなことに驚く。その強靭さを裏付けるのは、蓄積してきた膨大なデータに他ならない。

arrowsシリーズでは、私たちの日常で考えられるほとんどの環境、たとえば、気候や気温、さらには使用頻度などを考慮した独自の検証と試験が行われている。その結果を製品に反映し、より強度を高めたスマホへと進化させているのである。そして、重要なのは、あくまでもタフさだけを追求するのではなく、デザイン性と使い勝手の良さを損なわない絶妙なバランスが保たれていること。ただ丈夫というだけでは、幅広い層のユーザーを獲得することは難しい。デザイン性の高さとタフであることが求められるのだ。

クオリティの秘密を探りに工場に潜入

大きな2棟の建物にさまざまな生産ラインが展開されている。福利厚生施設としてテニスコートや体育館も併設。ちなみに、近隣にはゴルフ場も多い
独自の生産管理システムと連携し稼働している生産ライン。マシンツーマシン(M2M)システムが自動で設備の微調整や修正を行うのでミスが出づらい。重要なのはラインを止めないことだそう
arrows Be3に搭載されるプリント基版の製造工程の一部
現在のスマホの部品は、人の手では持てないほど小さなものが多い。中には、砂つぶのような部品もある

2018年に設立されたジャパン・イーエム・ソリューションズ株式会社(略称JEMS)は、携帯情報端末の開発・製造・修理、ディスプレイ装置の開発・製造・保守、ユビキタス製品およびPCBA関連の設計・製造・修理受託サービスを行う企業。本社のある兵庫県加東市は、東西に中国自動車道が通り神戸市や明石市から車で約1時間という利便性を備え、一帯には、日本の大手メーカーの工場が立ち並ぶエリアだ。

スマホの開発から、製造、修理までを一貫して行なっているJEMSの工場では、最先端のテクノロジーを駆使したロボットや機器がスマートに並んでいる。ロボットや機器は独自のシステムで管理され、流れ作業のラインにもロボットが導入されている。将来的には、すべてがコンピューターとロボットによるシステム構築が可能だが、ここでは、あえてスタッフが確認するというダブルチェックの体制が確立されていた。

生産ラインの一部には、職人スタッフの手で作業が行われる箇所もある
確実性を高めるために目視によるチェックもあり

ひと昔前ならば、職人の手や目で細かい作業を繰り返すのが、日本らしいモノづくりかもしれないが、この工場で見られたのは、将来的な工場の姿だった。人の手や目を頼りにした精密機器の生産ラインは、前衛的なものでありそれは、機械やコンピューターが未発達だった時代の話である。現在では、確実性を実現するために、関係会社と共同で独自に開発した仕組みで、製造ラインの機器同士が人間を介さず自動で情報を交換して修理や調整をする「M2Mシステム」ほか「AI検査システム」などが採用され、さらに目視でもチェックができる人が存在する。結果的に、本来、日本が得意としてきた高品質で高信頼という製品がつくり出されている。つまり、この仕組みがこれからの日本の工場の姿であり、モノづくりの姿勢なのだろう。

まさに百戦錬磨!
秘密の実験室「製品保証試験」へ

ハイクオリティを裏付けする製品保証試験室。独自で制作した様々な試験機器を使い高度な試験が行われている

JEMS工場内にあるFCNTの製品保証試験室では独自の保証試験が行われており、特に防水機能を確認する試験は、出荷するすべての製品に行われる。

画面に圧力をかけたり落下によるダメージの実験ならばそれらのデータを蓄積し、製品のアップデートに役立たせる。そして、これらの試験機は、独自につくられバージョンアップされている。この工程に厳しい目を向けることで製品の高品質と高信頼が保たれているのである。まさに、スマホ工場の“虎の穴”だ。

「エアリーク試験機」は、防水性能を確認するもの。試験機内に端末を入れ気圧をかけ端末の微小な変形を計測する
「浸水試験」では、実際に端末を水に浸す
「電源キーの耐久試験」は、サイドのボタンを10万回以上押す
「ねじり耐久試験」は、端末を繰り返し大きくねじる
「落下試験」は、1.5mの高さからコンクリートの地面に向かって落下させる。合計26方向の落下をすることで耐久を確認している
「こじり試験」は、USBを端末に差し込みそれを前後左右に繰り返しこじる
「圧迫試験」は、画面全面を強い力で押す
「3点曲げ試験」は、端末の中央に荷重をかけることで、折れ曲がりに対する強さを確認する

ジャパン・メイドに込めた想い

ジャパン・イーエム・ソリューション代表取締役社長・髙橋英明氏

「arrows Be3」の根本といえる日本のモノづくりは、将来的にどのように継続されていくのだろうか。モノづくりを担当するJEMSが考える日本らしさと今後の展望を髙橋英明社長はこう語る。

「私は、日頃から日本にモノづくりを残すべきだと考えています。昨今では、ハードとソリューション(ソフト)というのは別々に考えられがちなのですが、私はそれらをひとつにして考えるべきだと思います。弊社では、開発部門と製造部門をあわせもっていますので、それが可能です。さらに、日本人の感覚でモノづくりのプロセス、考え方、品質保証の在り方が実現できるのです。資源がないところでモノづくりをしてきた日本が大切にしてきた高品質と高信頼という付加価値がこれからのモノづくりには重要なのです。逆をいえば、その付加価値こそが日本のモノづくりの魅力なのです」

日本の技術と想いが詰まった
「arrows Be3」

arrows Be3 F-02L
サイズ:約W70×D 8.9×H147mm
質量:約145g
OS:Android™ 9.0
CPU:SDM450(1.8GHz 8-Core)
内蔵メモリ:RAM3GB/ROM32GB
外部メモリ:最大400GB(microSDXC)※注1
ディスプレイサイズ:約5.6インチ 有機EL
解像度(横×縦)HDR:FHD+ 1080×2220
アウトカメラ:有効画素数 約1220万画素 CMOS/F値1.9
インカメラ:有効画素数 約810万画素 CMOS/F値2.0
バッテリー容量:2780mAh ※着脱不可
持ち時間:連続通話時間約1100分、連続待受時間約610時間
LTE通信速度:受信時/最大150Mbps ※注2、送信時/最大50Mbps ※注3
問:富士通サポートセンター
Tel:03-3570-6064
https://www.fmworld.net/product/phone/f-02l/?fmwfrom=f-02l_spec

※注1:使用する外部メモリのメーカーにより、最大対応容量は異なります。最新の対応状況について、詳しくはメーカーホームページなどでご確認ください。また、機種・コンテンツにより制約があります。
※注2:通信速度は、技術規格上の最大値であり、実際の通信速度を示すものではありません。ベストエフォート方式による提供となり、実際の通信速度は、通信環境やネットワークの混雑状況に応じて変化します。
※注3:一部のエリアに限ります。詳しくは「ドコモのホームページ」でご確認ください。

文=菅野茂雄 /写真=小川久志