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民泊ビジネス最前線。ホストが本当に期待するテクノロジーとは?

 羽田空港を抱える大田区は、全国に先がけて民泊施設認定に取り組んできた。「サムライハウス幸村荘」は、京急穴守稲荷駅にほど近い、住宅街に位置する。玄関先でゲストを迎えるのはなんと「甲冑」。真田幸村が身につけたもののレプリカだという。これを身につけて、写真撮影ができるサービスも実施している(要予約・10000円)。
 オーナーのBinyさん(愛称)は、2016年3月に、いわゆる『合法民泊』に個人として参入した第一号。民泊ビジネスを先がけた人物でもある。民泊業にまつわる法律にも詳しく、2018年6月に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)制定の過程でも、業界を代表して積極的に国に働きかけ、ロビー活動によってルール厳格化に導いたという逸話をもつ。そこで、民泊業界全般に精通する彼に、民泊業の実態を聞いてみた。

ゲストは「生の観光情報」を民泊ホストに求める

「基本的に民泊を利用するゲストの方は、「ホテルとは違うもの」だと考えています。そこでお客様がホスト側に一番期待するのは、「生の観光情報」なのです。日本に来られる方も、多少の予備知識は持っているのですが、細かいところまでは知らない。日本人だって、たとえばフランスに旅行に行ったとします。『とりあえずベルサイユ宮殿は見たい』とだけ決めていても、ほかのことはファジーだったりしますよね。やはり、現地で得られる生のコンテンツ情報は貴重ですから、こちらがその期待に応えてあげる必要があると思います。この点は、現状の民泊ビジネスにおいて、まだあまり重視されていないと感じますね。
 あとは、民泊利用者の意外な困りごととして、カギの問題があります。自動チェックインなどを採用する施設もあるのですが、キーボックスにカギを入れておいて、お客様が取り出して利用するような形式の場合、『ボックスが開けられずに部屋に入れない』といったトラブルはよく聞きます。電子キーやスマートキーなどのテクノロジーが低コストで民泊施設に導入できれば便利だと思いますね。ただし、電子キーにおいてもトラブルがあります。Wi-Fiが不調で、まったく使えなくなったという事例もあるので、そういったところもフォローされていないと、お客様は安心して使えませんからね」
 民泊を巡る一般的な問題としては、ゴミと騒音が挙げられる。騒音に関しては、宿泊客が夜大声で騒いだりして、近隣住民の方から苦情が出るといったケースだ。これに関しては、ホスト側が注意喚起をするしかない。
「民泊ではゴミが大量に出るのですが、現在研究が進められているのが、ゴミの量を自動的に感知して一定量に達すると回収に向かうというシステムです。集積所に設置したセンサーを使ったIoTのシステムらしいのですが、これが実用化すれば、我々民泊業者にとっては非常にありがたいですね。大いに期待しています」

多言語対応の翻訳アプリがあれば、接客に困ることはない

 外国人ゲストが中心となれば、接客には英語力が必要なはず。かつて、会社員だった時代から、外国人の友人が多かったというBinyさんだけに、コミュニケーション面の不安はないのだろうか。
「確かに、外国人の友人を通じて異文化に接する面白さが根底にあって、この世界に入ったことは事実です。でも、本当は金融の世界で働いた経験から、宿泊業の『利回りの良さ』が魅力だったんですね。それはまあ置いておいて...(笑)。私自身、決して英会話が得意ではありません。それでも、業務上で必要なレベルの英会話であれば、私の語学力でも通常は対応できます。ただ、英語を話さないお客様もいらっしゃいますので、コミュニケーションが難しいと感じた場合は、音声翻訳アプリを使っています。多言語対応ですし、最近の翻訳アプリの精度はかなり高くなっているので、困ることはほとんどありませんね。私がおもに使っているのは、『VoiceTra(ボイストラ)』というアプリですが、31言語に対応しているし、精度もすごく高いと思います。
 これからは、テクノロジーがさらに進化していくと思うので、我々民泊業者にとっても便利になるのかもしれません。とにかく、我々のビジネスは、宿泊してくれたお客様が、どれだけ居心地良く、楽しく過ごしてもらえるかが大切です。そのためのツールとして、自動翻訳機やAIなどが活用でればいいと思います。でも、宿泊業に限らず、本当に顧客満足度を上げるためには、対面でのコミュニケーション力がカギになります。ホストが発した、ひとつのジョークによって、評価が高まることもあります。ただ、テクノロジーに頼るだけではダメだと思いますね。でも、お客様を満足させるサービスの力を高めるためのツールとして活用するという意味なら、ぜひ活用したいと思います」
「私のちょっとしたアイディアなのですが、チェックインした時にサプライズ的な演出ができたらいいな...と考えています。たとえば、お客様が到着したら、自動的にプロジェクションマッピングが始まるとか、そんな演出ができれば、いわゆる『つかみ』になりますよね。そんなコンテンツがテクノロジーの力を借りて実現するなら、夢があると思います」
 民泊ビジネスは、日本ではまだ歩き始めたばかりの新分野と言える。一時は"違法民泊"がはびこるなど、ネガティブなイメージもあったものの、ようやく民泊新法もスタートし、オリンピックに向けて注目が集まっているのは確かだろう。
「今のインバウンドの盛り上がりには、IoTが支えてきたと私は思います。LINEやワッツアップなどのダイバーシティで情報がやり取りできるからレスポンスが早いし、ホストの顔が見えることで、自国にいる時と変わらない感覚になれる、これこそIoTがインバウンドを支える大きな力になっていると感じます。日本でレンタカーを借りて、自由に旅する外国人の方も増えてきました。その敷居を低くしてくれたのも、IoTがあればこそではないでしょうか」
 Binyさんの指摘する通り、民泊ビジネスにおけるテクノロジーの活用が業界の将来に大きな影響を与えることは疑いない。産声を上げたばかりの民泊業界の行く手に注目だ。

■サムライハウス幸村荘
東京都大田区羽田4-5-5 TEL:050-5217-1643

文/コネクティプス編集部

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