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東京水辺ラインのQRコード利用多言語サービスが好評

 インバウンド需要の急激な増加に対応するため、官民ともに対策が進められている。特に近年での訪日観光客に人気が高まっているエリアとして、浅草、お台場が挙げられる。また広大な日本庭園をもつ浜離宮も外国人観光客の人気が高いスポットだ。
 そんな観光スポットへの移動手段として人気なのが東京都公園協会・東京水辺ラインが運営する水上バス。そこで東京水辺ラインが2018年5月に導入した、多言語対応の新サービスに注目してみた。

外国人需要が急激に高まっている水上バス利用者に対応

「お台場や浅草などのインバウンド需要増に対応するという目的に加え、2020年のオリンピック・パラリンピックを視野に入れると、今後はさらに外国人利用客の方が増加すると予想されます。そこで、多言語対応によるサービスを導入することを決めました」(東京都公園協会東京水辺ライン課)。
 そこで、2018年5月に東京水辺ラインが導入したのが、「QR Translator」だ。これは、QRコードを使った多言語表示サービスで、株式会社PIJIN(本社・東京都中央区)が開発したもの。東京都水辺ラインの発行するリーフレットをはじめ、コミュニケーションカードや船の発着場に設置してある看板に「QR Translator」を表示。ユーザーがQRコードをスマートフォンなどでスキャンすれば、水上バスの運行コースや時刻表情報、周辺の観光情報を紹介してくれる。さらに、料金換算機能も備わっており、乗船区間の金額も簡単に調べることができるなど、非常に利便性が高い。
 現在は15言語(日本語・英語・中国語簡体字・中国語繁体字・韓国語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・ポルトガル語・ロシア語・ベトナム語・タイ語・インドネシア語・マレー語・アラビア語)に対応している。特に優れているのが端末側に設定している言語を自動的に検索して、スピーディーに対応する翻訳コンテンツを表示してくれる点だ。たとえば、ドイツ人観光客なら、自分でドイツ語を選択せずとも、勝手にドイツ語で案内してくれるのだ。これだと言語を選択して設定する手間が省けるので、かなり便利だろう。
 導入した東京水辺ラインも、確かな手応えを感じている様子だ。
「乗船チケットの販売時や船内での外国人の方への対応が非常にしやすくなりました。外国からの問い合わせメールなどもよくいただくのですが、QRコードをメールで添付して対応可能なので、業務の効率性も格段にアップしましたね。これまでは、英語版や中国語版など、外国語版のパンフレットも発行しておりましたが、それも3〜4ヶ国語が限界でした。現在は日本語版だけを作ればいいので大幅なコストダウンになりましたし、15カ国語対応ができるようになって、サービス面も向上しました。すべての印刷物にQRコードを掲載すればいいので、今後の汎用性が高いこともメリットですね。スマホなどの端末を持っている外国人観光客の方がほとんどなので、非常に評判もいいです」
 ちなみに、「QR Translator」の導入事例としては、東京水辺ライン以外にも、東京都庁45階展望室、横浜税関資料展示室、サンシャイン水族館、日光自然博物館などの施設が挙げられる。また、地方自治体の観光案内サービスとしても、静岡県三島市、奈良県奈良市、愛媛県内子町などで採用されている。

「東京都トライアル発注認定制度」が導入の背景にあった

 今回の「QR Translator」導入に際しては、「東京都トライアル発注認定制度」が適用された点も興味深い。この制度は、東京都内にある中小企業の新規性の高い優れた新商品や新サービスの普及を支援するべく、東京都が新商品を認定してPR等を行うとともに、その一部を試験的に購入して評価するもの。平成21年度にスタートし、「QR Translator」は平成29年度の認定商品。ほかに平成29年度に同制度が適用されて東京都にトライアル採用された例としては、姿勢・体幹強化を向上させる装具「トランクソリューション」(トランクソリューション株式会社)、災害対策用不織布毛布「ウォームテンダーライト」(加賀屋産業株式会社)、排泄予知ウェアラブルデバイス「DFree」(トラブル・ダブリュージャパン株式会社)、災害時用にエレベーター内に設置する備蓄品収納ボックス「昇太郎」(株式会社ネットビジョン)などがある。
 同制度は、技術力を有して優れた商品を開発しても、広くPRすることがコスト的に難しい中小企業にとってはメリットが大きい。これまでは、インバウンド需要に向けた認定商品はあまり見られなかったが、「QR Translator」が認定されて外国人ユーザーに好評を得たことにより、インバウンドに向けて製品を開発する東京都内の中小企業にも希望を与えるかもしれない。
 また、QRコードを利用したサービスは、低コストで導入可能な上、専用の端末やアプリを必要としない点で、ユーザー側のハードルが低く、使い勝手も格段にいいなどメリットが大きい。今後も、QRコードを使った画期的な新サービスなど、インバウンド市場で新たなヒット商品が生まれる可能性を秘めていると言えるだろう。

文/コネクティプス編集部

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