需要増で注目される、カラオケ業界のインバウンド対策とは
近年のインバウンド需要急増を受けて、様々な業界がその動きに対応しているが、カラオケ業界もその例に漏れない。業務用通信カラオケJOYSOUNDを運営する株式会社エクシングの子会社である、株式会社スタンダード(本社:東京都港区)では、2015年からインバウンドを意識した多言語対応サービスを自社で運営するJOYSOUND4店舗にて多言語対応サービスを実施しています。
しゃぶしゃぶ人気が過熱してカラオケ店にも相乗効果
「弊社はエクシングが100%出資の子会社で、カラオケ業務以外にもネットカフェやしゃぶしゃぶ店などの飲食チェーンも展開しています。カラオケは全国105店を運営していますが、そのうち東京の1店と大阪2店、京都1店の計4店舗となります。
日本語のわからないお客様に対してもスムーズに受付業務が行えるように、指差しPOPを導入したり、多言語に対応したカラオケの操作説明書なども用意しました。ドリンクやフードのメニューも英語表記を併記していますし、これは全店共通なのですが、カラオケを操作する端末も多言語対応となっており、英語、中国語、韓国語に対応しています。
京都の祇園店と、大阪の道頓堀2丁目店およびなんば戎橋店では、土地柄もあって実際に観光客の来店が多いのですが、東京の品川港南口店では、どちらかというと商用で来日される方も多く、品川港南口店ではカラオケを楽しむ方だけでなく、リーズナブルに飲み放題を楽しむという目的で使われる方も多くみられます。
むしろインバウンド需要が目立って多くなっているのは、大阪・道頓堀の2店舗です。道頓堀2丁目店と同じビルにある弊社のしゃぶしゃぶ店の場合、インバウンドのお客様が全体の多くを占めていて、日本人のお客様のほうが少ないという逆転現象が起こっている日もあるくらいです。しゃぶしゃぶ人気との相乗効果もあり、大阪・道頓堀ではカラオケもインバウンド需要が高まっていますね」(同社営業企画部・販促グループ)
インバウンド需要が高い大阪では自動翻訳機も導入
そこで大阪・道頓堀の直営店では、自動翻訳機を導入している。手の平サイズのハンディタイプで、動作環境はAndroid。音声を即座に翻訳可能なものだ。さらに同様の翻訳機能を持つアプリをタブレット端末でも使用している。タブレットの場合は翻訳後の音声再生だけでなく、文字情報として再生されるためにさらに利便性が高い。
「音声だけだとわかりにくいこともありますが、文字だと目に見えるので、伝わりやすいようです。品川港南口店では、おもに飲み放題等のシステムを外国人の方にわかりやすく伝えるということが主眼となっており、現状では自動翻訳システムの導入は考えておりません。指差しPOPでの対応でも十分可能かと思っております。フードやドリンクのオーダーでは、メニューの写真を見てオーダーできるので、多言語対応をせずとも、現状ではそれほど支障はありませんね」
ほかに新宿西口店など、一部の店舗では、外国人専用の2時間飲み放題パックなども用意している。カラオケと飲み放題にプラスして、たこ焼きなどのおつまみをセットにしたプランで、外国人に人気の高いフードをセットしてリーズナブルな料金設定にしたものだ。
「それでも外国人のお客様はカラオケではまだ少なく、割合としては全体の1割未満です。しかし、しゃぶしゃぶ人気は東京の店舗においても過熱しており、品川港南口店の階上で営業しているしゃぶしゃぶ店も、近隣ホテルからのご紹介などで、外国人のお客様が急増中です。今後インバウンド対応をさらに強化していく方針に変わりはありません」
JOYSOUNDと言えば、カラオケコンテンツ自体の充実ぶりでも知られ、車窓の風景映像を背景に、電車の車掌になりきってアナウンスをする「鉄道カラオケ」で話題を呼んだ。2018年8月1日からは、品川港南口店において「飛行機カラオケ」がスタートしたばかりだ。グランドスタッフの空港内のアナウンスやキャビンクルーの機内アナウンスをはじめ、コックピットでの機長と副操縦士の掛け合いなどが楽しめるユニークな試みだ。大型プロジェクター3面に映像を投影し、あたかも機内にいるかのような臨場感を味わえるという。機長のアナウンスなどは英語なので、外国人にも楽しめるかもしれない。
そんな独自のアイディアを仕掛けてきただけに、今後はインバウンドを意識した新たなサービスが登場する可能性もあるだろう。日本発祥で国際的に普及したのがカラオケ文化。その「本場」において、インバウンドに対してどんな新鮮な体験を提供できるのか。他社を含めて、今後のカラオケ業界の動向が注目される。
文/コネクティプス編集部
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