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インバウンドの注目を集める「コト消費型」スポット 港区編

 インバウンドの消費行動は、「モノ消費」から「コト消費」へと移行していると言われる。個別の製品やサービスの持つ機能的価値を消費する「モノ消費」に対して、単品の機能的なサービスを享受するのみでなく、個別の事象が連なった「一連の体験」を対象とした消費活動を「コト消費」と呼ぶ(経済産業省『平成27年度地域経済産業活性化対策調査報告書』より)。
 よりわかりやすく定義すると、コト消費とは、街歩きや外湯巡りのように、魅力的なサービスなどによってデザインされた「時間」を顧客が体験して楽しむことである。訪日観光客の志向も、着物体験や温泉巡りといった「コト」を楽しむようになっているが、リピーターの増加がその背景にある。観光庁の『訪日外国人消費動向調査』によると、2016年10〜12月期の訪日外国人のうち、初めて日本に来るという人は38.4%で、2回以上来ているという人は61.6%を占める。訪日外国人の6割以上がリピーターなのだ。しかも、10回以上も日本に来ている人が14.3%もいることにも驚かされる。そこで、「コト消費」型のインバウンド対策に取り組んでいる東京都港区に注目してみた。

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お座敷体験や茶の湯体験に加え、「銭湯」も人気

 インバウンド対策を強化中の港区では、「Minato City Guide and Etiquette」と題した観光&マナーブックを配付している。英語、中国語、韓国語を併記し、コト消費に対応すべく、日本文化やマナー、作法などを外国人にわかりやすく、手順も踏まえて手引きしている点が特徴だ。寿司やそば、和菓子の食べ方などを詳しく解説。「最中はそのままかじらず、手で割って食べる」など、細かな情報までフォローしており、実用的だ。ほかにも、屋形船ツアーや赤坂の老舗料亭でのお座敷体験ツアーなどが紹介されている。「Ozashiki games」の一例として、「投扇興」(扇を投げて的を落とす遊び)や「とらとら」(ジェスチャーによるじゃんけん遊び)といった代表的なお座敷遊びの解説もされている。
 また「茶の湯体験」ができるスポットとして、八芳園(港区白金台1-1-1)を紹介。椅子に座って気軽にお茶を楽しむ「立札席」(点茶800円・お点前2000円)が外国人に人気だ。ちなみに「点茶」は裏で点てた抹茶と和菓子をいただくもので、「お点前」は目の前で点てたお茶を和菓子といただく。

 さらに訪日外国人に人気が高まっているという、銭湯体験も詳しくガイド。靴箱やロッカーの使い方に始まり、「湯船によって湯温が異なるので、手で湯に触れて熱さを確認してから入ろう」などと、ビギナー向けに丁寧に解説している。銭湯のマナーとして「服を着たまま浴室に入らないこと」、「湯船にタオルを入れない」、「脱衣所に戻る時は軽く体を拭いてから」といったことまで書いてあるので、外国人には実用的だ。港区で銭湯とは意外な感じもするが、露天風呂のある「アクアガーデン三越湯」(港区白金5-12-16)や天然温泉の「麻布黒美水温泉 竹の湯」(港区南麻布1-15-12)。3種のジェットバスを備えた「南青山 清水湯」(港区南青山3-12-32)など、意外に多い。

東京湾を歩いて渡るレインボーブリッジ遊歩道

 港区のおすすめ観光スポットして紹介されているのは、まずは増上寺(港区芝公園4-7-35)。徳川将軍家とのゆかりが深く、6人の徳川将軍が埋葬されていることに加え、国の重要文化財に指定されている三解脱門、大殿と東京タワーとのコラボが見どころだ。訪日外国人に人気のグッズは、家康公が崇拝していたという「黒本尊阿弥陀如来」をモチーフにした「勝運御守」(500円)。
 続いて愛宕神社(港区愛宕1-5-3)も定番人気のスポット。東京23区にある自然の山としては最も高い(とは言っても標高25.7m)、愛宕山の山頂に位置する神社。徳川家康の命により、防火の神様として1603年に創建されたという。この神社で有名なのは「出世の石段」。江戸時代に曲垣平九郎(まがき・へいくろう)という馬術名人が、徳川家光に梅を献上するために馬で駆け上がった故事に由来する。目がくらむほどの急勾配の石段で、ここを馬で駆け上がったとは信じがたい。しかし、あるテレビ番組で検証したところ、スタントマンが実際に成功したというから、事実だった可能性もありそうだ。

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 港区のガイドブックでは、神社での参拝のマナーが詳しく紹介されているが、手水舎では「柄杓を左右の手に持ち替えながら手と口を清め、最後に柄杓を立てて柄を洗う」といったマナーなど、日本人でもあまり知らないような細かいところまでしっかりフォローされている。
 ほかに外国人の観光客を連れて行くと喜ばれそうな意外なスポットとして、レインボーブリッジ遊歩道にも注目したい。芝浦とお台場を結ぶ約1.7㎞のレインボーブリッジを歩きながら、高層ビルや東京湾を一望できる。眺望の素晴らしさもさることながら、東京湾上を歩いて渡るという体験が新鮮なようだ。これも立派な「コト消費」と言えるだろう。お台場自体が訪日外国人の注目度が高いエリアであり、デックス東京ビーチ(港区台場1-6-1)4階にある台場一丁目商店街は、おみやげスポットとして人気。昭和レトロな雰囲気を再現した日本の庶民文化を味わえる空間で、駄菓子や懐かしいおもちゃが喜ばれている。
 また、近年で港区が力を入れているのが、レンタサイクルによる「港区自転車シェアリング」だ。現在港区には59箇所の無人サイクルポートが設置され、30分150円で電動アシスト自転車をレンタルできる。最初の30分は150円だが、以降は30分ごとに100円の延長料金がかかる。東京は坂道が多いが、電動アシスト自転車なら楽々登れるし、電動アシスト自転車に乗ること自体も新鮮な体験となるため、立派なコト消費型観光と言える。港区のガイドブックには、レンタサイクルでの公園巡りを推奨しており、有栖川宮記念公園や国立科学博物館付属自然教育園が紹介されている。有栖川宮記念公園は丘や渓谷、日本庭園の景観が楽しめる風情満点のスポットで、しかも入園無料なので人気が高い。

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 日本人には、港区と言えば六本木ヒルズや東京ミッドタウンといった都会的なスポットの印象が強いかもしれないが、「コト消費」を求める訪日観光客の視点で見ると、また異なった魅力を持つエリアだということにあらためて気づかされる。もし、海外からの急な来客をもてなすような機会があれば、上記の情報を参考にして案内すれば、大いに喜ばれるはずだ。ただし、ただ連れて行くだけではなく、日本独自の文化やマナーを外国人にしっかり伝えなくてはいけない。銭湯の入り方はともかく、神社の参拝や手水舎での柄杓の使い方なども、日本人としてマスターしておくべきなのだろう。

文/コネクティプス編集部

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