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"ツイッターおばあちゃん"ミゾイキクコさんならどう活用する? AIスピーカーが実現するシニアの健康生活

"ツイッターおばあちゃん"として人気のミゾイキクコさんは、83歳。
毎日、日々の食事、戦争体験、高齢者問題など60ものツイートをし、含蓄あるつぶやきは若者を中心に支持を得ています。

専業主婦として息子さん2人を育て上げ、現在はひとり暮らし。炊事洗濯などの家事はもちろん、お庭の手入れなどもこなし、80を過ぎてなおとてもお元気で、かつインターネットのある生活を当たり前に送っています。

そんなミゾイさんにご自身のこと、そしてAI(人工知能)を活用した次世代デバイスについてなどお話を伺いました。

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やろうと思ったことは、迷わずにすぐやる。そこから学ぶことがあるんです。

――2010年1月にツイッターを開設されて、現在(2018年3月)、フォロワー数が9万人を超えています。とても多くの方に読まれていますが、そもそもツイッターを始めたきっかけを教えてください。

大学のクラスメイトにイベントの告知をしたいと相談されて。ちょうど鳩山由紀夫さんがツイッターを始めたころで、それで、いいかもしれないと思って始めたの。
始めてみてわかったのは、告知をしたくてもフォロワーがいないと誰も見てくれないんだということ。
それで自分のことをいろいろつぶやいていたんだけど、戦争体験を書くと反響があって、3カ月で5000人くらいにフォロワーが増えたの。
私は高齢で、女性で、無職でしょ、そんな人いっぱいいるのね。でも、高齢で無職の女性がツイッターをやっていると、それが取り柄みたいになるのね。
そこから広告代理店の依頼をもらってシニアアドバイザーを2年務めて、その後もいろいろなメディアに取り上げていただきました。
フォロワーは若い人が圧倒的に多いけど、60歳以上もいるし、90歳近い高齢の人もいます。その年齢で始めようっていう人はね、孫にパソコン習って始めたっていうような方で、意欲がありますよね。意欲のない人は若くてもやらないしね、ダメよね(笑)。

――未体験のことを始めるのは勇気がいりますが、ミゾイさんはツイッターを始めるとき、ためらいはありませんでしたか?

私はやろうと思ったらすぐやってみるのね、迷わないで。そこで学ぶことがあるわけ、やってみていろいろなことがわかるの。
新しいものを使うときに「できる自信が付いたらやろう」っていう人いるけど。自信なんて初めから生まれるわけではないの、やってみて湧いてくるものなんだから。グジグジ迷うより、やろうと思ったらやっちゃうのがいいのよね。
タブレットは発売当初から買っていて、いまは大小合わせて13個持っています。小さいものは電車の中でとか、どこか出掛けるときに使います。
本を読むときはもっぱらこれ(大きい方)ですね、明るいから、夜寝ながらでも読めるの。いくらでも文字も大きくできるでしょ。高齢だから視力が弱いわけで、そういう人には明るくて字が大きくてというのが便利なのよ。
お稽古ごとの予約もインターネットで。すごく便利ですよ、朝起きて寝巻のままでも申し込める。そうじゃないと申し込みに行くために身支度しなきゃならないでしょ(笑)。

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――毎日、朝昼夜の食事をツイッターに上げていますが、品数が多いですし、たくさん召し上がられますね。やっぱり健康に気を付けていらっしゃるのでしょうか

たんぱく質と炭水化物と、野菜をしっかりとるようにしています。息子にも「ちゃんと肉を食べなさい」って言われるの。私は肉類や魚類があまり好きではないんだけど、努力しておいしくしてね、食べる気が起きるようにしてるの。
運動はね、以前は1時間くらい散歩にも行っていたんだけど、一度転んで肩を骨折したことがあって。それ以来は時々ルームランナーで歩いています。
健康のことで一番心配なのは、認知症になることです。認知症になったら、ひとりじゃ危なくて暮らせなくなってしまいますから。

AIはお年寄りにこそ必要なもの。ひとり暮らしをサポートしてくれたらうれしい。

――ミゾイさんは生活にインターネットを活用されていますが、AIには興味ありますか? 会話をしたり、音楽を聞いたり、病院や店と連動したサービスを提供したりするAIスピーカーが次世代のデバイスとして注目を集めています。生活に密着した活用法が模索されていますが、どんな機能があるといいと思いますか?

AIとおしゃべりできたら、おもしろいですね。
私、ひとり暮らしでしょ。ツイッターは文字だけのやり取りだから、息子から「人と会って話をすることが必要だ」と、いつも言われているんです。だからお友達を昼食や夕食に誘って、一緒にご飯食べたりしているの。でも、友達は40~50代が中心。
同世代の友人も時々来ますけど、私たち世代だとご主人に介護が必要で家を出られない方もいるのね。でも介護をしていると煮詰まっちゃうみたいで、ご主人がデイサービスに行っている1日だけでもおしゃべりしたりすると、たまったものが出て、すっとするみたいなんです。
AIが家にあって、会話を楽しめるといいですよね。
年を取ると物忘れしやすいんですよ。
例えばお湯を沸かすためや料理をするのにガス台に火をつけますよね。そこでじっとしてられないから他のことを同時にやっていると、それに集中しちゃってガス台の火を忘れちゃうの。いまは熱が高くなると自動で止まるものもあるけど、「そろそろ煮物ができますよ」ってAIが教えてくれたらありがたいな。お年寄りには一番、火の始末が心配だから。
忘れるって仕方のないことなのよね。若いころは3つくらいのことを同時にできたけど、もうできないの。どうしても若いころのクセで、同時にやらなきゃもったいないってなるけど、忘れちゃうのね。
ひとり暮らしの心配ごとをAIがサポートしてくれたら...そういうのあったらいいなと思いますね。

――確かに、そうなったら安心ですね。ひとり暮らしで、自立した生活をできるだけ長く続けるために必要なツールになるといいですね。

そうですね、何にもできないと子供にやってもらわないといけなくなっちゃいますから。
自分で生活に必要なことができても、年を取ると、忘れるとか思い出せないということがあるの。それを誰かが言ってくれたら「あ、そうだ」ってなるわよね。
だからお薬の管理をしてもらえたらいいわね。年を取ると"薬を飲み忘れる"んじゃなくて、"飲んだか飲んでないかわからなくなる"んです。それが困るの。AIが「まだ飲んでませんよ」て言ってくれたら助かるわ。
誰かと一緒に住んでいたらいいけれど、ひとり暮らしだからそういうことを教えてくれると安心よね。

――AIやインターネットは、いろいろな情報を得られるのも魅力ですよね。

いままでいろんなお稽古ごとをやりましたけど、お稽古の時間のうち半分はおしゃべりです。おしゃべりがすごくいいのね、雑談の中に情報がたくさん入ってくるの。とりたてて"情報"っていうんじゃないようなことが、結構いい情報になったりするんです。
でも好奇心旺盛な人は自分から積極的に情報を求めるけれど、旺盛じゃない人はそうではないでしょう? だからそういう人にこそ、AIは必要だと思いますよ。自分から求めない人に情報をバーッと提供してくれるから。

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「私こんなことやらなくても困らない」って言う人って、周りの人が迷惑してしまうのね。例えばお稽古ごとの連絡をメールで一括でできると便利だけど、電話でしか受けられない人っていて。本人は「メールができなくても困らない」って言うんだけど、連絡する人の方がすごく困ってしまう。
やらない人って、それを使って何ができるかがわからないわけ。だからそういう人にも、「メールが便利ですよ」「タブレットを買ったらこういうことができますよ」って、AIがどんどん言ってくれたらいいと思うの。
人から言われると「私、困んないからいい、そんな話」ってなっちゃう。でもAIが言ってくれる分には、ただ聞くだけ。それでも情報は、多少は残るわけよね。それが必要だと思うの。
人間だと言う方も聞く方も感情があるから不愉快になるけど、機械だからいいわけよ。嫌なら電源を切ればいいだけでしょ(笑)。

――感情がないから受け入れられるというのは、確かに納得ですね! しかしお年寄りには先進技術が受け入れられない方も多いと思いますが、ミゾイさんは真逆ですね。

こういった機器がない生活なんて考えられないわよね。
ツイッターやAIが先進的って考えること自体が良くないと思うの。"日常茶飯事"みたいな感覚になって、これからはしかるべきだと思うの。特別じゃないのね。
大人だから難しいと思ったり、壊れるんじゃないかって心配したり。でも子供は思わないでしょう?
だからむしろデイサービスなどで使い方を教えたらいいんじゃないかって思うの。お遊戯したり童謡を歌ったりするより、特に男性にはいいんじゃないかしら。使えるようになったら人に教えたりして意欲が湧くようになると思うの。

――意欲があれば、生活にも張りが出ますものね。
ミゾイさんご自身がとても意欲的な方ですが、それが元気につながるのでしょうか。

意欲があるということが、健康につながると思います。
大学のクラスメイトは10人しかいないんだけど、毎年1回クラス会をやっているの。皆80歳過ぎて元気で、存命なのね。あの時代に受験勉強して大学に入った人たちだから、"いままで生きてきた自分を無駄にしたくない"っていう意欲がある。目的を持って生きているから健康なの。
私も80歳を過ぎてから本を出版したりしているわけ。自分がやりたいことを続けていたからそういう形になっていく。
「こうなりたいから誰かやってくれ」と言ったって、そういうわけにはいかないからね。こうありたいって思ったら、自分がやるしかないわよね。

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(プロフィール)
ミゾイキクコさん
1934年、埼玉県生まれ。お茶の水女子大学理学部を卒業。教職に就いたあと、26歳で専業主婦に。2010年から始めたツイッターで戦争体験や日常のこと、価値観などをつぶやき、含蓄ある言葉に共感が集まっている。著書に『何がいいかなんて終わってみないとわかりません。』(KADOKAWA)、『キクコさんのつぶやき 83歳の私がツイッターで伝えたいこと』(ユサブル)。
ツイッターアカウント @kikutomatu

取材・文/ほなみかおり
写真/齋藤ジン
編集/毎日が発見ネット編集部

2018.04.16

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