未来のビジネスチャンスと
今をつなぐヒント

Produced by 富士通コネクテッドテクノロジーズ

メニュー

アプリを作ったら、人生が一変! 国連本部で講演した、プログラマーおばあちゃんのAI生活。

82歳でゲームアプリ「hinadan(ひなだん)」(ハイシニアが楽しめるひな壇飾りアプリ。男雛、女雛、三人官女、五人囃子、仕丁を並べるという、シンプルなルールが特徴。雅なボイスが和の雰囲気を演出する)を開発し、アップル社のイベントにも登場した、おばあちゃんプログラマーのマーちゃんこと若宮正子さん。2018年2月には、国連の会議で「デジタルスキルが高齢者にとって重要」とスピーチし、話題となった。普段から、WindowsとMacのパソコン(PC)をサラッと扱いながら、AIスピーカーに「OK Google」と流暢な英語で声をかける、最先端の機器を軽々と扱うハイテクおばあちゃんだ。
そんな若宮さんに、パソコンとの出会いやアプリ開発、AIテクノロジーの使い方や未来について話を伺った。

世界中が注目する話題のおばあちゃんプログラマー。
「マーちゃん」、アップル→首相官邸→国連へ!

----国連でのスピーチは、どうやって実現したのですか?
安倍総理が、2017年の9月にニューヨーク証券取引所で行った経済スピーチで、私のことを話してくださったらしく、それがキッカケで国連に呼ばれたんです。
支援してくださった方々が、「Airbnb」で部屋を借りてくださり、マンハッタンのデパ地下でおかずを買って、晩ごはんを食べたり。「Uber」も自分のiPhoneにインストールして、それを利用して国連に行ったりとか。国連ライフを一週間くらい楽しみました。
と、最先端のヨコ文字をサラッと巧みに織り交ぜ話し始めた若宮さん。国連の場でスピーチするまでのストーリーもユニークだ。

IMG_3712.jpg

----プログラマーとしての顔以外にも、Excelアートも有名ですが、もともとパソコンとの出会いはいつ頃なのですか?
勤めていた会社を退職する頃で、世間にパソコンが広がり始めた頃ですね。まだインターネットが普及していなく、パソコン通信でチャットをやってみたくて始めたんです。そして、本を読んだりして独学で覚え、「Excelアート」を始めました。私、パソコン教室もやっているんですよ。それで生徒さんに「Excelって面白いのよ」って勧めたら興味を持ってもらったのが最初。それをキッカケに徐々に広まっていきました。Excelアートって、以外とクロスステッチとか編み物などの手芸にも通ずるところがあって、シニアの女性にもピッタリなんですよ。最近では、「3D Builder」が登場して3D化したでしょ。だからもっと可能性があるんじゃないかと。奥行きがあり面白みがグンと増したので、追求し続けています。さらに、テキスタイルのような柄を活かして、オリジナルのグッズも作成しています。
そして、「ExcelでArtを」の記事が、マイクロソフトのコミュニティー記事として紹介され、TEDのカンファレンスでスピーチしました。

_MG_6220.jpg

----そのスピーチがキッカケで、アプリの開発につながったのですか?
全然関係ないんですよ。私は、ブロードバンドを利用し子供達の学習活動や地域のコミュニケーション力・国際力の向上などをテーマにボランティア活動する、「ブロードバンドスクール協会」という団体の理事も務めています。ここでシニア向けの活動も行っていて、ハイシニア世代にデジタル機器をお勧めしています。スマホを使うシニアも増えているのですが、誰もアプリやゲームを"年寄りが面白いって思うこと"を想定して作っていない。年寄りが面白がるアプリがあってもいいのでは?と思ったのです。
そこで、開発者に「何か作ってよ」と言ったら、「僕たちは、年寄りが面白いと思うものは作れませんよ」って返され、確かにそれは言えるなと...。「若宮さん、自分が作ればいいじゃないですか」と言われたのがキッカケでしたね。プログラマーになろうとか思わなかったし、今も思っていないんです。

_MG_6353.jpg

----ひな人形をテーマに選ばれた理由は何ですか?
ブロードバンドスクール協会で、「電脳ひなまつり」っていう企画を毎年行っています。シニアは体が動かなくなったり、介護だったりで外に出られない人が多いので、ネット上で展開して、各地方のひな人形をアップするバーチャルひな祭りがあるんですよ。
我々の年代はおひな様って関心が高くて、並べ方も知っている。若い人は知らないだろうけれど、それでゲームやったら年寄りは面白がるだろうと考えたのがはじまりですね。
それで、ひな祭りをテーマにしたiPhoneアプリ「hinadan(ひなだん)」を開発したんです。そしたら、アップル社のティム・クックCEOから直接声を掛けられ、2017年の6月に、開発者イベント「WWDC」で紹介されたんです。

合体画面.jpg

----そこから国連へとつながったのですね。
そうですね。9月から「人生100年時代構想会議」の有識者議員として、毎月政府の会議に出席するために首相官邸に通ったり、総務大臣賞を受賞したり、「WWDC」に紹介されてから、にわか有名人になっちゃった。

_MG_6241.jpg

----日本でも話題になりましたが、海外の取材も多かったそうですね。
CNNの取材も受けました。海外で反響を呼んだのは、海外の人にしてみれば、意表をつかれたというか、世界にばぁさんが出るっていうことは、かつてなかったことなので。
「メロウ倶楽部」という、インターネット上の老人会を運営しているのですが、その中のメロウ伝承館で、昔の事柄をデジタル技術を駆使して、次の世代に伝えていく活動もしています。
シニア世代は、終活をやったときに、昭和12年の小学校の卒業アルバムとか、学童疎開時の献立表とかそういう貴重な資料を捨ててしまいがちなんですよ。でも、それをスキャンしてデータ化すれば、次の世代に伝えられる。
自分の国の伝統文化をデジタル機器を新しい世代に手渡しするという、そういう発想が外国の人とって面白いのでは? 若宮っていうばあさんは、日本の伝統文化をデジタルなものを通して、次の世代に伝えていこうとしていると。

31512266_10215731456620212_1419464752635052032_o.jpg

急に人生がガラっと変わった80代。
時代の流れに逆らわず乗り続けたらこうなった!

----AIスピーカーも活用されていますが、どう活用していますか?
もともとAIスピーカーが日本で発売されるより前に海外で購入していたので、英語ver.と日本語ver.の2つ使っています。今のところライフスタイルすべてに対応できている訳ではないので、料理をするときに「3分経ったら知らせて」とか、気になることを質問したりするくらいですかね。でも将来性はスゴくあると思いますよ。例えば、AIスピーカーが、高齢者の自立支援に使えるんじゃないかなっていうこと。今度はスクリーンが付くらしいわね。そうなってくれば、お友達とバーチャルおしゃべり会をやるとか、もう一つは、いろいろな養護施設で、お父さんやお母さんと一緒に暮らせないお子さんとかもいるでしょ。その子たちにとって、おばあちゃんという存在は貴重な存在らしいんです。だから、おばあちゃんから昔の話を聞くとか、悩みを聞いてもらうとか。おばあちゃんと子供たちの交流なんかもできたらいいなと思いますね。自分の孫でなくてもいいんですよ。要するにバーチャルおばあちゃん。いろいろ交流を広げるツールになりそうです。面倒な操作がいらなく、キーボードを打たなくてもいいですし、誰でも使えるのが魅力ですね。

_MG_6307.jpg

----新しい技術がどんどん導入されていますが、コレから先どういう世界になると思いますか?
いま中国ではスマホで決済して、お店でモノを買わなくなったでしょ。おじいちゃんが孫にお小遣いをあげるときも、資金移動でやれちゃう。スゴいなと思うけれど、給料やボーナスが振り込みになったときのように、それが当たり前になるのよ。
人生100年時代ですから、これからはシニアがやっぱり強くならないと。リケジョが少ないと言う話を聞きますけれど、これからは年寄りもリケ老にならないといけないと思います。介護だって、ロボットだとか介護補助器ができますよね。でもそれを使う人に、テクノロジーのアレルギーがあってはダメだと思う。

_MG_6272.jpg

もともと好奇心が強く、何にでも挑戦してきた若宮さん。
ご自身のサクセスストーリーを、「私が、老人会の草野球大会に出場して、バットでボールを打ったのではなくて、たまたま球の方がバットに当たっちゃったんです。ふにゃふにゃとフライが上がったら、猛烈な追い風が吹いてきてそれがヒットになって、あれよこれよのうちにホームランになっちゃった。そして、気がついたらそれが場外に飛んで無くなったと思ったら、アメリカまで飛んでいたって感じ。打った本人は、あれ?みたいな感じ」と、独特のニュアンスで例えた。
そして、「首相官邸や国連に自分が行くなんて思ってもみなかった。まさかそういう役が私に回ってくるなんて。首相官邸の会議に行くと、前に安倍さんが座って、コッチに麻生さんがいて。私の隣は経団連の会長さん。"なんで私こんなところにいるんだろう?"って思ったりしますよ」と語ってくれた。
最近は電子工作に興味があり、プログラミング専用こどもパソコン「IchigoJam」を購入したそう。次は何をしてくれるのか期待したい。

(プロフィール)
若宮正子さん
1935年、東京都生まれ。東京教育大学附属高等学校(現在の筑波大学附属高等学校)を卒業。1954〜1997年まで都市銀行および、その関係会社勤務したのち、メロウ倶楽部幹事、NPOブロードバンドスクール協会理事に就任。メロウ倶楽部で、戦中戦後を生きた人々の貴重な生の証言をデータベース化する「メロウ伝承館」を担当し、国連情報社会世界サミット大賞日本大会で最優秀賞を受賞。高齢者向けPC活用術として「Excelアート」を考案、iPhoneアプリ「hinadan(ひなだん)」を開発。2017年9月からは、政府が主導する「人生100年時代構想会議」の有識者議員に選ばれている。著書に『60歳を過ぎると、人生はどんどんおもしろくなります。』(新潮社)、『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』(ぴあ)。
HP http://marchan.travel.coocan.jp

コネクティプス編集部

このページをシェアする

あわせて読みたい

RANKINGランキング

    WORD注目のワード

    CONTACTお問い合せ

    お問い合わせ