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スマートフォンと業務用アプリが実現した製造現場の効率化

 ビジネスでスマートフォンを活用する場合、メールやスケジュール管理、その他の業務上のデータのやり取りといった印象が強いが、より効果的かつダイナミックに業務でスマートフォンを活用している工場での実例を紹介したい。スマートフォンの業務活用は、生産現場においても非常に重要なポイントになっているからだ。

バーコード読み取りで個数管理。生産性が向上した自動車部品工場

 まずは自動車部品を製造するX社(愛知県)の事例。同社では製品加工の一部を外注していた。ところが委託先の業者の中には、手書き伝票によって個数管理をしている業者もあり、ミスや発注漏れなども発生していた。手書き伝票だとシステム上で個数管理ができないため、社員たちの手間がどうしても多くなる。
 そこで、スマートフォンを業務端末として導入することで、問題解決を図った。スマートフォンのカメラで入出庫のバーコードを読み取り、データはCSV(Comma Separated Value)ファイルとしてサーバーへ送られる。CSVファイルは互換性が高く、基幹システムを改良する必要もないので低コストで済む。そして、サーバーから基幹システムへデータを取り組むことで、簡単に個数管理がデジタル化されるというわけだ。業務レベルに対応する専用のバーコードリーダーと専用アプリを開発する必要はあったものの、導入の効果は明らかだったという。
 社内工場と外注業者にスマートフォン端末を導入した結果、社内工場では従来はパソコンでのデータ送信のために持ち場をいったん離れる必要があったが、工場にいながらデータ送信作業ができるため、作業時間短縮の効果も大きかった。外注先でも手書き伝票では頻繁に発生していた記入ミスや漏れがなくなった。精度の面だけでなく、これまでは手書き伝票をシステム入力する人員が大量に必要だったが、それも不要になり、大幅に生産性が向上したのだ。夜間に充電して昼間に使用するパターンでもバッテリー容量に問題はなく、節電対策にも効果が現れたという。
 さらに同社では、業務内容の改善にもスマートフォンを活用することにした。自動車部品の製造現場では、外見的にはほとんど同じように見えるが、細かい形状が微妙に異なるケースが多々ある。材質やサイズがまったく同一でも穴の数がひとつ違うだけで別の製品になってしまうのだ。出荷の際に、うっかり細かい違いを見落としてしまうと誤配送となるため、クレームとなる事故も少なくない。
 ミスをなくすために、冊子や手順書などを作成して対応してきたが、数百品目にわたる手順書は数百ページにもなってしまい、なかなか現場で細かく目を通すことが難しかった。そこで、出荷マニュアルをスマートフォンのバーコードで読み取り、製品画像と確認の注意点が表示できるようにした。画面を見ながら製品の目視と検品を行い、異なる製品が紛れ込んでいたり、不具合品が発生した場合は、その場でスマートフォンのカメラで不具合部分を撮影。その情報はすかさずサーバーへアップされる仕組みだ。
 この事例でのポイントは、導入済みの「入出庫端末アプリ」に追加機能を行うことで、スマートフォンの強みを活かした段階的な業務改善が行われたという点だろう。アプリの機能追加はゼロからの開発に比べて手軽に行えるし、低コストで済む。現場サイドにとっても、すでに導入しているアプリの機能追加であれば、作業者が操作方法にも慣れているので、比較的スピーディーに活用できるというメリットも見逃せない。

結露対策でのスマホ導入から用途が広がったデザート工場

 次はちょっと意外な理由でスマートフォンを導入した、デザート製造工場の事例を見てみたい。大手コンビニチェーンにデザートを供給するY社(広島県)では、以前製造現場の管理担当者にPHSを配付していた。ところが、食品工場ではよくあるが、鮮度を保つために工場の室温が10〜15度と低めに管理されているため、結露によるPHSの故障が頻繁に起こっていたのだ。
 管理者は製造現場と事務所を頻繁に行き来するため、温度差による結露の発生が故障を招く。落下や水没による故障も多発していた。デザート工場では、各工程間の作業状況を把握し、タイミングを合わせて複数の工程を進行させる。そのために頻繁に連絡を取り合う必要があるので、PHSは不可欠だった。
 ついには故障の頻発でPHS端末が足りなくなり、館内放送で呼び出しをして固定電話で会話をする状況に追い込まれることもあった。固定電話による連絡は非効率だし、相手に余計な作業負荷をかける。したがって、差し迫った状況にならないと連絡しないなど、現場間の連携に問題が生じた。
 結果、防水機能を備えて、衝撃にも強いスマートフォン端末の導入を決めた。音声通話が目的でスマートフォンを導入する例は珍しいが、実際に導入したことで、Y社ではスマートフォンのメリットを活かした業務改善にも取り組む。具体的には外国人社員とのコミュニケーションに翻訳アプリを活用することだった。同社の製造ラインには約400人が働くが、うち20%が外国人だ。手作業によるデザートの盛り付け工程などでは、細かいニュアンスの違いで的確に指示を伝えられないこともあるので、外国人社員とのコミュニケーション円滑化にスマートフォンが一役買っている。
 さらに、新しいアイテムの製造手順などを動画で撮影し、スマートフォンで見ながら現場で確認するといった活用も行われている。また、夜間作業中に機械の不具合といったトラブルが発生した場合なども、現場から責任者に写真を送って状況報告をして対応の指示を受けることも可能になった。自然災害による交通規制など、配送上で不可欠な情報もスマートフォンの導入で共有できるようになり、業務は著しく改善したという。同社では当初こそ通話目的での導入ではあったが、いざ導入してしまえば、活用法が広がって積極的な業務改善につながったという好例だ。

 以上2社の実例を見てきたが、スマートフォンを使った業務改善の真骨頂はやはり業務アプリにあると言えるだろう。業務アプリは、現場の課題を解消できることはもちろんだが、将来の機能追加を可能にするため柔軟性に優れた構成であることが望まれる。それも、現状のフローを極力変えない形で導入できることがベスト。スマートフォンの標準的な機能だけでは業務改善効果は限定的されるので、自社の業務に特化した専用アプリの開発も検討すべきだ。
 スマートフォンの業務アプリを導入すると、「次はこれをやろう」という業務改善のアイディアが色々と出てくることが指摘されている。業務改善にゴールはないので、ひとつが解決すれば、新たな問題が発生することは避けられない。そのためにも、機能追加によって対応できる業務用スマートフォンが有効なツールとなり得ることは確かだ。

文/コネクティプス編集部

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