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海外出張の失敗談。英語さえできれば...

 海外出張での失敗談のなかでは、やはり英語ができないがゆえの失敗が多いようだ。そんな実例をいくつか紹介しよう。
まずは、出版関係の仕事に従事するSさん(40代・女性)の話から。彼女は通訳を兼ねるコーディネーターに頼りっぱなしの海外出張で、業務とは直接関係のない、思わぬところで失敗してしまったという。

パーティーで誰も相手にしてもらえず、たまらぬ孤独感を

「音楽系媒体を扱う業務で、国内アーティストの仕事がメイン。業務上で英語を使うケースはほとんどありませんでした。英語を勉強する気はまったくなかったですね。海外アーティストを取り上げる場合でも、取材時は通訳が必ずついていたので、業務上の支障はまったくなかったのです。

 ところが、初めてアメリカ出張に向かうことになりました。シカゴでの音楽イベントの取材で、本来の担当者の代理という形で、たまたま私が担当になったのです。それでも、現地ではアメリカ在住のコーディネーターが同行し、取材の段取りや通訳をしてくれたので、仕事はスムーズに進めることができたのです。
 最終日に、あるパーティーが行われました。内輪のパーティーだし、平服でOKということなので、私も招待されてコーディネーターの女性と一緒に参加しました。仕事絡みではありますが、気軽な席なので特に心配はしていませんでした。何かあれば、コーディネーターに頼めばいいくらいに思っていたのです。
 しかし、あくまでオフィシャルな仕事の場ではなく、彼女はもう私のことなどお構いなし。周囲の外国人たちと楽しく打ち解けながらガンガン楽しんでいます。日本人の姿はほとんどなく、たまに話しかけてくれる人もいましたが、英語が通じないとわかるとすぐに行ってしまいます。もちろん、自分から彼らの輪の中に入っていく勇気などありません。ただひたすら、時間が過ぎゆくのを待ちました...。たくさんの人がいるのに、誰一人相手にしてくれないのです。これほど、孤独で辛い思いをしたことは、後にも先にもありません。
 しかし、コーディネーターの女性の立場も理解できました。このような席では、私の通訳をする義務は彼女にはないのです。むしろ、海外アーティストの取材もあるのに、それまで英語の勉強をまったくしてこなかった自分を恥ずかしく思ったのです。帰国後は、遅ればせながら英会話スクールに通い、なんとか日常会話程度なら話せるようになりました。あのパーティーで感じた疎外感によって勉強しようという気になったので、今ではむしろ良かったと思っています」

大事な留守電メッセージを30回聞いてやっと理解

 続いて、コンピュータ関係の企業に勤めるKさん(30代・男性)の話。彼は転職して間もなく、単独でのアメリカ出張を命じられた。ひとりでレンタカーを借りて、ホテルにチェックインしたまではよかったのだが...。
「転職して3年目にアメリカ出張を命じられました。初めての海外出張だというのに、ひとりでレンタカーを借りて自力でホテルに行けと言われて...当時の僕には高いハードルでした。日本でレンタカーを借りたこともないのに。
 とりあえずロサンゼルスの空港に着いて、どうにかレンタカーを借りて、地図を頼りにホテルに向かいました。慣れない左ハンドル、しかも暗い夜道で不安いっぱいでしたが、どうにかたどり着きました。翌日から研修が始まり、クタクタになってホテルに帰って、帰りの便を確認しようとチケットを探したのですが...ないのです。どこをどう探しても、チケットがありません。パニックになって荷物をひっくり返しましたが、どこにもない...。日本に置いてきたということはありません。行きの便に乗る時に帰りのチケットを持っていたことは記憶しています。このままでは帰れないので、東京の上司に緊急のメールを送りました。
 2日目にホテルに戻ったところ、部屋の留守番電話にメッセージが入っていました。東京の上司からだと思ったのですが、アメリカ人男性らしい超早口の英語で、何を言っているかまったくわかりません...。しかし、とにかく僕にとって大事な話であるような気がします。しかし、何度聞いても聞き取れない...。仕方なく何度も何度も繰り返し聞いてみました。そのうち、おぼろげに「airline ticket」という言葉が聞き取れました。「you left」というフレーズも何度目かに聞き取れて、ようやくこれは僕がなくした帰りのチケットのことで、電話の主はレンタカー会社だとわかったのです。つまり、僕はレンタカーを借りた時にカウンターにチケットを置き忘れていたのでした。安堵しましたが、その事実を把握するまでに、僕はメッセージを何度再生したことでしょう...。30回は聞いたと思います。自分の英語力の乏しさが本当に情けなかったですね。
 チケットは翌日の研修の後で取りに行き、無事に戻ってきました。その失敗談もさることながら、研修で外国人の友人と大勢知り合えたのに、十分にコミュニケーションできなかったことがとても悔しくて、本気で英語を身につけたいと思ったのです」

準備万端のプレゼンで、「わかったふり」をしたばっかりに...

 最後は電機メーカーに勤務するBさん(40代・男性)。英会話スクールに通って勉強をしていた彼は、英語力を披露しようと張り切ってイギリス出張に向かった。しかし、そんな意気込みが裏目に出てしまう...

「30歳頃から英会話の勉強を始めて、その2年後くらいにイギリス出張の機会がありました。日頃の勉強の成果を発揮するチャンスだと、私は張り切ってロンドンに出発しました。現地支社で向こうのスタッフと顔合わせをして、早速ミーティングに入りました。私は、日本でしっかり準備したプレゼン内容を何度も練習してきたため、かなり流ちょうにビシと決めることができたのです。しかし、これが失敗のもとでした。2年スクールに通って発音はうまくなっていたと思うのですが、ヒアリングはまだまだです。しかも、ネイティブのビジネス英語なので、まったく聞き取れないのです...。
 プレゼンの後に、質疑応答に入ったのですが、最初の質問の内容が半分も理解できませんでした。本来なら、聞き取れないなら聞き返すとか、正直に理解できていないことを示すべきなのですが、私は勢いに任せてついわかったふりをしてしまったわけです。もちろん、そんなごまかしが通用するはずもなく、その後はしどろもどろに...。「なんだ、コイツ?」という顔をされて、結局、大恥をかいただけで出張は大失敗に終わりました。
 私の失敗は自分の実力を過信したことと、「わかったふり」をしてしまったことに尽きます。わからなければ、「わからない」と、相手にしっかり伝えなくてはいけません。帰国著後こそ、「もう英語はこりごり」と思った私ですが、その後は気を取り直して英語の勉強を続けています」

 三者三様の失敗談だが、失敗を機に英会話への意欲が高まった点は共通している。仕事で英語を使うなら、やはり英語力は必要になるし、仕事を通じて外国人とのつき合いが生じた時も、コミュニケーションするためには英語力は必須。ただ、スクールや教材でしっかり英語を身につけたという人ばかりではない。途中で挫折してしまう人もいれば、通ったけど身に付かなかったという人もいる。
 以前であれば、そんな挫折組の人たちはただ劣等感を持つか、諦めて語学力を求められない仕事に転職していったのかもしれない。幸い、現代であれば翻訳アプリや自動翻訳機の力を借りることも可能になった。翻訳機能のテクノロジーはさらに進化していくはずだ。いずれは、ここで紹介したような海外出張の失敗談もまったく聞かれなくなるのではないだろうか。

文/コネクティプス編集部

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