そうですね。PCのデザインをするのはこれが初めてだったので普通の事だと思っていたのですが、通常はこんなには大きく変わらない、と後で聞きました(笑)。これが初期のデザインイメージですが、完成品とはずいぶん違います。ここから完成までの半年間、1ヶ月に1個の割合でモックアップを作っていました。もうラフデザインにいたっては数え切れませんね。

　私は今まで社内で携帯電話のデザインをやっていまして、その前はジュエリーやアクセサリー関係のデザインをしていました。もちろん当社ではないですが(笑)。で、デザインするとき使われているお客様がよりカッコよく見えることを重視しました。というのもLOOX TはFMVのラインナップの中でも先端的なイメージがあって、携帯電話やファッションなどと近い方が良いと考えたからです。まあ、簡単に言えばPCらしいデザインをするよりカッコいいものを、ということです。

　色に関しては12〜13色候補が挙りました。今年のトレンドであるレザー調のグリーンとか、茶やゴールド、ベージュなどさまざま。その中から選ばれたのが、このマーズレッドとレザーホワイトです。あとスタイルに関しては、ノートPCは大きくカタチを変えられるものではないので、ラインであるとか細かいニュアンスで従来との違いを表現しています。エッジのところも、そのままストンと落とすよりは逆アールをつけて削った方がより柔らかく、薄く見えるとか。

　レザーホワイトの方は、「触ってみてちょっと違うな」という感じを出したかったので、表面に細かい凹凸を作ってレザーのような柔らかい質感を表しています。実は人間の手は、素材は硬くても、そこに凹凸があると「柔らかい」と感じることができるんですよ。ぜひ触ってみてください。また、白もここまで純白、マットで真っ白のものは今までなかったと思います。このモデルは、従来のお客様はもちろん、外で積極的にモバイルするような、よりアクティブなお客様にも使ってもらいたいですね。一方のマーズレッドの方は、コスメのイメージも入って高級感を出しています。

　全体に余分なものを排除してできるだけシンプルに仕上げています。ボタンの数も最小限に抑えて、ライトもシンプルにしています。「less is more」と言いますが、ミニマムな表現にすることによって薄さや質感を表現しています。

　マーズレッドも今までのPCにない色合いに仕上がり、気に入っているのですが、やっぱりレザーホワイトですね。カタチはかなり変わりましたが、最初のデザインイメージを残したプロポーションになっていて、デザイナーとしての想い入れが強いです。